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    フットボールの価格

    10月15日に放映されたBBCの「フットボールの価格」という特集番組が、その週のイングランドの話題を独占した。ここ4年間のプレミアリーグの各クラブのチケット代の値上率が、英国の一般的な物価上昇率の2倍であるという数字を示したものだった。更に、スタジアムで紅茶とホットドッグ程度の軽食を取る場合の価格を加えた実質的な出費を計算し、「1人のファンが負担する1試合の平均価格」の高騰ぶりを問題視したものだった。具体的な価格はクラブ間の差異や、座席などによりチケット価格が異なるという差異はあるが、1人当たり£33(約6,000円)~£120(約22,000円)という実態に、政府も調査を開始する意向を表明するに至った。

    Liverpoolファンの間では、深刻な問題として頻繁に話題に上がる議題だった。「シェフィールド・ユナイテッド(現在3部)ファンの友人は、プレミアリーグには戻れない方が良い、と言っている。『金持ちのレジャー化したプレミアリーグに比べて、3部では全国どこに行ってもチケット代が安い。チェルシーと対戦して、£85(約16,000円)のチケット代プラス旅費、£2(約370円)の紅茶+£4(約400円)のホットドッグなどなどに大金を費やすより、このまま3部に残って、スター選手はいないけども無理なく払える金額で試合を堪能する方が満足感は高い』と。半分は自嘲的なジョークかもしれないが、本音もあると思う」。

    元ブラックバーンなど(現役時代は1993-2008)、現在はBBCのアナリストとして活躍しているロビー・サベージが、ファンの批判を裏付けるかのように、「金持ちのレジャー化」したプレミアリーグで恩恵を受ける選手の実態を語った。

    「ファンにこれほど大きな負担をかけて、その高騰するチケット代の一部で飛躍的な昇給を受けている選手たちは、ファンの痛みを分かっていない。最近、エバトンのスティーブン・ネイスミスがポケットマネーで地元の失業者にチケットを贈呈して話題になったが、これはごくごく例外。自分も現役時代はそうだったが、殆どの選手はチケット代がいくらかすら知らないのが実情。先日、CLの試合でマンチェスターシティの空席を非難したポール・スコールズとリオ・ファーディナンドも、ファンにとってチケット代がどれほど負担かという実態を理解していたら、あの言葉は出なかったと思う」。

    かくして「フットボールの価格」の話題が頂点に達していた10月18日のプレミアリーグで、サンダーランドがアウェイでサウサンプトンに8-0と大敗した試合の後で、チケット代が別な形で話題に上がった。イングランド北端のサンダーランドからイングランド南端のサウサンプトンまで、往復640マイル(約1,000キロ)を駆け付けた2,600人のサンダーランド・ファンが、試合終幕に、定番の「赤と白」の応援歌を合唱する姿がその日のハイライト番組で流され、「サンダーランドの選手たちは、このファンのサポートを受ける資格がない」と酷評されたのだった。

    その直後に、サンダーランドのGKビト・マンノーネが「こんな素晴らしいファンにこんな思いをさせるなんて恥ずかしい。自主的な罰金という形で、選手全員で2,600人のファンにチケット代を払い戻したい」と宣言した。

    これに対して、サンダーランドのサポーターズ・クラブの代表者が、「選手が我々ファンのことを気にしてくれることは、ありがたいと思う。しかし、我々が選手たちに期待しているのは、チケット代を払い戻すことではなく、次の試合でピッチの上で返してくれること」と語り、イングランド中のファンの拍手を誘った。

    ファンは、勝っても負けてもチームをサポートする。「負けたからチケット代を払い戻す、というのは本質から外れた議論。選手が自主的に罰金を払うことに異議を唱えるつもりはないが、その資金はもっと建設的な使途に回して欲しい」というサンダーランド・ファンの言葉に、イングランド中のファンが一斉に同意を示した。

    たとえチームが情けない試合をしようとも、大差で負けようとも、ファンの忠誠は変わらない。しかし、クラブや選手が、ファンのサポートを当たり前と考えるのは間違いだ。

    地価が高い首都ロンドンのクラブは、昔から他都市に比べてチケット代が高く、「フットボールの価格」の調査でも、最高値はアーセナル(£97/約18,000円)だった。しかしクラブごとの最安値を比較すると、Liverpool(£40/約7,400円)が最も高く、「失業率最悪のマージーサイドで、これではチケット代が払えなくて断念するファンが出るのは現実的な問題」と、大きな批判を集めた。

    「'コップ'と言った時に、世界中のフットボール・ファンの殆どが、Liverpoolのホーム・スタジアムであるアンフィールドの有名なスタンドのことだと瞬時に理解する。でも、例えば、'ストレトフォード・エンド'と言った時に、どのクラブのことか分かる人はどれだけいるだろう?」と、Liverpoolファンは振り返る。

    「そのコップとは、何があっても忠誠を尽くすファンのこと。Liverpoolのチームは黄金の70,80年代の強さはなくなったかもしれないが、ファンが変わらない以上、アンフィールドは永遠に聖地であり続ける」。

    ファンがいないフットボールはあり得ない。そして「フットボールの価格」は、ファンが今後もチームをサポートし続けられる環境を、クラブが財政面で見直す必要があることを説いたものだった。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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