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    代表選手の「謎の負傷」

    10月のインターナショナル・ウィークは、ラヒーム・スターリングがイングランドのヘッドラインを独占した。10月12日のエストニア戦で、後半64分にサブで登場したスターリングが得たフリーキックをウェイン・ルーニーが決めて、イングランドが1-0と勝った試合の後で、ロイ・ホジソンが「スターリング本人が『疲労のため体力が回復し切れていない』と言ったので先発から外した」と公表したことが発端となった。

    イングランド中が蜂の巣をつついたような騒ぎとなった「ラヒーム・スターリングが疲れているから外して欲しいと申し出た」事件に、メディアの反応は二分した。

    「代表チームのシャツを着て試合に出るプライドのかけらもない怠け者」とスターリングを酷評した陣営の中には、元イングランド代表選手のアナリストも多数含まれていた。この夏のW杯ブラジル大会では「ボーイ・ワンダー」と言われ、イングランド中の賞賛と期待が集中したスターリングが、一瞬にして諸悪の根源になった。「予選で疲れているから出たくない、と言うような選手は本大会でも代表チームから外れるべき」。

    いっぽう、スターリング擁護に回った側は、ホジソンの言動を問題視した。「代表監督が、選手との内密の会話を公の場に晒したのは過ち。その結果、スターリングは非難の嵐の中に単独で投げ込まれた。しかも、今回の件で、代表チームの他の選手にも『ホジソンには何も言えない』という懐疑心を焼き付けた」。

    後者の中には、ライバル・チームの新旧選手も含まれていた。リオ・ファーディナンド(現QPR)もその一人だった。「スターリングの行動は正しい。イングランド代表チームの選手たちは疲労や不調を感じていてもプライドが高すぎて、絶対に言わない。しかし外国の選手は、疲労を感じた時には休んで、調子を整えて試合で実力を発揮する」。

    Liverpool陣営では、擁護派の全国版メディアの言い分に加えて、ロイ・ホジソンに対する批判色を強めた。

    「昨年11月にダニエル・スタリッジがイングランド代表チームで負傷させられて、直後のマージーサイド・ダービー(試合結果は3-3)に先発できなかった時にも、ホジソンの一言がブレンダン・ロジャーズの怒りを増幅した。試合前に既に軽傷を負っていたスタリッジを、重要とは言えない親善試合(対ドイツ、1-0でドイツの勝利)に出した理由を、『スタリッジの忍耐力を試したかった』と説明した」と、リバプール・エコー紙は辛辣な文面でつづった。

    「今年の9月にスタリッジが再びホジソンに負傷させられた時に、ロジャーズが『スタリッジを負傷の危険から守るために、Liverpoolでは、試合の後48時間は回復期間を設けている。イングランド代表チームではそれを無視して、回復期間中に本格的なトレーニングをしたために負傷を負った』と批判したのに対して、ホジソンは『代表チームでは48時間も選手を休ませる余裕はない』とLiverpoolの手法を批判しただけではなく、『スタリッジ本人はトレーニングを拒否しなかった』と責任転嫁した。今回、スターリングが負傷させられないために申し出たところ、ホジソンはその会話を公表して世間の非難をスターリングに向けさせた」。

    まさにその「世間の非難」は激化する一方だった。第三者というチームのファンからの批判の中には、スターリングがジャマイカ出身で5歳の時にイングランドに転入してきた経歴を題材にしたものも混じっていた。「イングランド代表チームの試合に出るのがイヤならば、ジャマイカに帰るべきだ」、「疲れているから外してくれって?ジャマイカ代表チームなら疲れないんじゃないの?」。

    そんな中で、隣町から聞こえてきた宿敵マンチェスターユナイテッド・ファンの声が、Liverpoolファンの心を温めた。「この一連の騒ぎは、実質的には昔からある『国対クラブ』の対決。ホジソンとロジャーズが真っ向から対立する、というならば理解できるが、19歳の選手を矢面に立たせるのは間違い」と、メディアの過剰反応を批判した上で、本来の問題に対する見解を語った。

    「ファーギー(サー・アレックス・ファーガソン)の頃には、インターナショナル・ウィークの度に、ユナイテッドの選手の『謎の負傷』(※)が注目を浴びた。今、世の中の非難がユナイテッドではなくLiverpoolの選手に向かっている、という状況は、意外過ぎてピンと来ないくらいだ」と笑いながら、「その頃、我々ファンはファーギーを全面的に支持した。ロジャーズも同様に、自分の大切な選手をイングランド代表チームで無謀な使われ方をすることに対して異論を唱える権利があると思う」。
    ※負傷を理由に代表チームを外れた選手が、インターナショナル・ウィーク明けのリーグ戦には『脅威の回復』を遂げて先発することから、メディアが『謎の負傷』と称したもの。

    「ただ、スターリングに疲労を溜めさせたのはイングランドだけでなくLiverpoolにも責任はある。スタリッジの負傷のためスターリングに負荷がかかり過ぎたのは明らか。そして今回の件で、ロジャーズのプレッシャーはより大きくなった。次の対戦相手であるQPRは現在最下位で、Liverpoolにとっては必勝の試合。しかも、3日後にCLのレアルマドリード戦を控えて、スターリングの使い方にも注目が集まってしまった」。

    Liverpoolファンは、ライバル・ファンの冷静な分析に頷きながら「ホジソンが代表監督を勤める限りは、今後はロジャーズもファーギーの『謎の負傷』手法を見習うべきかもしれない」とジョークを言いながら、必勝のQPR戦に思いが馳せた。スタリッジが5週間ぶりに復帰する朗報に期待を膨らませる一方で、苦しいスタートになったプレミアリーグは、いよいよ厳しい局面に差し掛かった。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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