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    ふたを開けたのは誰?

    この夏にLiverpoolでの8年間に終止符を打って、古巣である母国デンマークのブレンビーIFへと去って行ったダニエル・アッガーが、ほとぼりが冷めた9月21日にデンマークのTVで語った「Liverpoolを出る決断の背景」は、Liverpoolファンの間で大きな話題になった。

    「Liverpoolでの最後の8ヶ月に、ブレンダン・ロジャーズとは殆どまともに会話したことがなかった」と、監督との亀裂を明かしたアッガーの言葉は、「アッガーがとうとうふたを開けた」という見出しでイングランドのいくつかのメディアが引用した。

    過去の苦い出来事について、やっと傷口がふさがった頃に持ち出して「真相」が明るみに出る、という意味の「ふたを開ける」という表現は、フットボール界では、去って行った選手や監督のショッキングな証言を指す慣用句として使われる。しかも、その真相とは誰もが薄々察していたもので、あえて耳にするよりはふたを閉めたままにしておきたかった、というネガティブな反応を示唆することが多い。

    そのアッガーのインタビューの中でLiverpoolファンに最も重たかったのは、「僕は常にチームを優先してLiverpoolのために行動した。それが選手の任務だと信じていた。でも、最後の1-2年で、自分のためにチームを踏み台にすることもためらわない、という人もいることを実感した。自分には絶対にできないことだが、そういうやり方もあるのだと知って、目が開けたような気がした」というくだりだった。具体的な名前は上げなかったが、デンマークのメディアは「ルイス・スアレスのことを指している」と解釈していた。

    スアレスの「ふたを開けた」のは、スティーブン・ジェラードが最初だった。9月のインターナショナル・ウィーク中に、旧友で昨年からスカイのアナリストとして活躍しているジェイミー・キャラガーのインタビューで、ジェラードがイングランド代表での最後のW杯(2014年ブラジル大会)について語った時のことだった。「W杯敗退決定の直後に、沈んだ気持ちで見ていたイタリア対ウルグアイ(試合結果は1-0でウルグアイの勝利)で、あの『噛みつき事件』は壊滅的な打撃だった。これはスアレスがLiverpoolを出る足固めに出たのだと直感した。イングランドでも希望を失い、Liverpoolでもベスト・プレイヤーを失うダブルパンチになった」。

    このジェラードの言葉は、Liverpoolファンの間で、「誰もが薄々感じながらあえて口にしなかった真相」だった。続いて今回のアッガーのインタビューで、スアレスの「ふた」が全開することになった。

    スアレスが2011年1月にLiverpool入りし時に既に、オランダでの経歴は有名だった。スアレスにヨーロッパ進出の舞台を与えたフローニンゲンを出てアヤックスに移籍した2007年に、最初は出し渋ったフローニンゲンを訴えるという行動に出たこと(最終的にはアヤックスが移籍金を上げて打開)、更に、次のステップに進むために相手選手を噛んでアヤックスを出た話は、ヨーロッパ中に知れ渡っていた。

    その経歴を持ってLiverpoolに来たスアレスが、2013年4月には、CLなしで低迷していたLiverpoolを見限って、出て行くために2度目の噛みつき事件を起こした。ただし、ここでスアレスの計算が狂った。Liverpoolが放出を拒否したため、スアレスの計画は延期を余儀なくされたのだった。

    その2013年夏の茶番劇の最中にも、スアレスの意図は誰の目にも明白だった。その時点では法的な効力がなかった「違約金」£40M+1を提示して獲得に動いたアーセナルの、ファンの間では現実的な議論が交わされた。「スアレスにとってCLは目的ではなく手段。アーセナルに来てCLに出て、本当の目的であるスペインの二大クラブの目に留まり、1年後にはスペインに行ってしまう計画は見え見え。それでも、今季だけでもアーセナルのトロフィー獲得を助けてくれるならば、ファンとしては割り切ってスアレスを応援する」。

    Liverpoolのトップ4入りとスアレスの得点王が現実的になった2013年12月に契約更新にサインした時、Liverpoolファンは、スアレスにとってLiverpoolは踏み台に過ぎないという真相に「ふた」をする決意を固めた。その新たな契約に有効な違約金条項が含まれていたこと、LiverpoolがCLの目標を達成しても、スペインの二大チームから誘いが来ればスアレスは出て行くだろうとは、誰もが心の中で確信していた。

    そして予想通り、この夏にスアレスはバルセロナへと去って行った。

    アッガーが「目が開けた」と表現したスアレスのやり方は、ファンにとっても強烈な印象を植え付けたことは否めない。ふたを開けたくなかった反面、出て行ったスアレスに対して非難を感じなかった理由は、たとえ次のステップへの通過点だったにせよ、「Liverpoolで優勝を目指す」と宣言し、自分の言葉を実現するために全力を尽くしたことだった。

    「5月のクリスタルパレス戦で、3-0とリードしながら3-3の引き分けに終わり、優勝に実質的にピリオドを打った試合の後で涙を流したスアレスが、チームメイトとファンに向かって『Liverpoolでの置き土産としてリーグ優勝を達成したかったのに、それが出来なかった』と謝る声を聞いたような気がする」と、ファンは頷いた。

    これからスアレスは、30代中ごろまでスペインでバリバリ活躍してバロンドールを取り、最後は母国ウルグアイの心のふるさとであるナシオナルに戻って引退するのだろう。そのキャリア・プランを実現させる能力と決意を持った選手であることを知っているLiverpoolファンは、今後のスアレスの行方を楽しみに見つめ始めた。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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