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    なくしてから気づくもの

    イングランドのファンの間では、CLのテーマ音楽はひどく不人気とは有名な話だ。例えばチェルシーやアーセナルで、ホームでのCL戦の前にこの音楽が流れると、スタンドのファンは、あたかもこの音楽が耳障りな雑音だとばかりに自分たちのチャントを激化する。Liverpoolファンも例外ではなく、ほぼ常連だった2009-10季まで、毎試合でこの音楽をかき消す音量のチャントがアンフィールドのCL戦の風物詩だった。

    そのCLの音楽と縁がなくなってから5年経ち、久々のCL復帰となった今季、Liverpoolファンは苦笑しながら本音を漏らした。「以前は、あの冗長な音楽がうっとうしかった。でも、今は聴きたくて聴きたくてたまらない」。

    しかし9月16日のアンフィールドでのPFCルドゴレツ・ラズグラド戦で、Liverpoolファンは、あれほど待ち焦がれたテーマ音楽が流れた途端に、それを合図に声を張り上げ、5年前のコップの風景で塗りつくした。感動に震えながら清聴していたい気持ちを抑えていつもの態度を貫くファンの姿に、実況放送のアナウンサーは「ヨーロッパ中にその名を知られているコップは、今日も試合前から気合いに満ちています」と賞賛した。

    ふたを開けるとCL1週目は、チェルシー(対シャルケ04、1-1)、アーセナル(対ボルシアドルトムント、0-2)、マンチェスターシティ(対バイエルンミュンヘン、0-1)が揃ってポイントを落とし、イングランドのメディアはさっそく「受難のCL」と危機説を打ち出した。唯一、勝星でスタートしたLiverpoolも酷評を免れなかった(試合結果は2-1)。元エバトンのアナリスト、ケビン・キルバーンが「Liverpoolはとても、とても、とてもラッキーだった。グループ・ラウンド全6試合中、最も勝ちやすいと思える試合で、引き分けがせいぜいという内容だった」と畳みかけた。Liverpoolファンは「元エバトンのアナリストがLiverpoolを褒めるはずがない」と口先では反論しながらも、批判されても仕方ないプレイだったことは誰もが認めていた。

    そして2週目の9月30日~10月1日は、チェルシー(対スポルティングリスボン、1-0)とアーセナル(対ガラタサライ、4-1)がそれぞれ勝利を記録する中で、ホームでローマに1-1と引き分けたシティが、元ライバル・チームのアナリストからぼろくそに言われる憂き目を見ることになった。

    「試合開始30分前のスタンドは、空席だけが目立った。アンフィールド、オールド・トラッフォード、チェルシーなどなどと比べて、シティはCL特有の雰囲気が全く感じられない。今のシティは勝てる選手を揃えた強豪であることは事実。でも、ファンは?彼らはCLに出られる栄誉を理解しているとは思えない」。

    ITVの解説者として活躍している元マンチェスターユナイテッドのポール・スコールズが、批判の矛先を、僅か37,509人と発表されたこの日の観客に向けたことで、イングランド中の話題を独占することになった。折しも、エティハド・スタジアム(シティのホーム)ではスタンドの拡張工事が開始したばかりで、「今でも空席だらけのスタジアムを、6万2千人にすれば空席が増えるだけ」という皮肉がメディアを飾った。

    これに対して第三者のチームのファンは、「スタンドの空席の数について、ライバル・ファンがジョークにして笑うのはそれはそれ。でも、不況にも拘わらずチケット代は上がる一方で、ファンの財政的負担は多大。そのファンの負担で給料をもらっている選手やアナリストがファンを批判するのは反則」と、シティ・ファンに対する同情の声が大きかった。

    Liverpoolファンも、「この3万7千人のファンは、チームが3部落ちした1998–99季にも忠誠心を維持し、プレミアリーグ優勝を達成する栄誉の土台を作った人々。彼らを批判するのはお門違い」とシティ・ファンを擁護する一方で、自分たちの経験を振り返った。「決して安くないチケット代£50を支払って、平日の夜にCLグループ・ラウンドの試合に行くのは負担だ、という言い分は理解できる反面、それが出来るのは恵まれた環境にあるということを、彼らもCLの試合に行きたくても行けない悔しさを味わうまでは、わからないかもしれない」。

    その言葉が聞こえたかのように、シティ・ファンの間でも、ユナイテッドのワン・クラブ・マンだったスコールズに対する反論が渦巻く中で、自分たちの足元を見つめなおす声が上がった。「スタンドの空席は、チケット代だけが理由なのだろうか?同地域にあるユナイテッドや、経済情勢ではもっと悪いリバプール市にあるスカウサーが、CLの全試合で超満員になる実態を考えると、我々が出来ないというのは言い訳だと思う。アンフィールドでのルドゴレツ戦を見て、不調に苦しむチームを全力でサポートするスカウサーの姿には、正直、感銘を受けた。あの試合は、スタンドのファンがチームを引っ張り上げて決勝ゴールをたたき出した」。

    さてLiverpoolは、10月22日に次のCL戦でアンフィールドにレアルマドリードを迎える。10月1日のアウェイでのCLバーゼル戦で0-1と敗れた試合の後で、「我々は、絶対に勝つという気力に欠けていた。バーゼルの方が意気込みで優っていた」と語ったスティーブン・ジェラードは、CLのテーマ音楽を5年間待ち続けたファンがスタンドから引っ張り上げる力に、チームが答えなければいけないことを理解していた。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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