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    ホリー・グレイルを目指して

    12月21日のFIFAクラブ・ワールド・カップ決勝で、Liverpoolは、延長の末ブラジルのフラメンゴに1-0と勝って、クラブ史上初の優勝杯を獲得した。

    イングランドの事前の話題では、この大会を低く評価する声は決して少なくなかった。伝統的に南米のチャンピオンとヨーロッパのチャンピオンが対戦する大会(旧インター・コンチネンタル・カップ=トヨタ・カップなど)は、ヨーロッパの裕福なリーグのクラブの目に止まり、プロとしての名誉と大幅昇給を得るチャンスと全力を注ぐ南米のチームに対し、過密日程の渦中にあるイングランドのチームは「負傷を避けることが最優先」という意識が拭えない分、盛り上がりに欠けることが往々にしてあった。

    Liverpoolは典型的で、これまで1981,1984,2005年と3回の出場で、優勝はゼロだった。

    「やっと、クラブ史上一つだけ欠けていた優勝杯が埋まった」と、地元紙リバプール・エコーは掲げた。「ただ、目標達成したのでこれで終わり?というと、それは違う。ビル・シャンクリーが言ったように、『ホリー・グレイル(※)』が残っている」。
    ※ホリー・グレイル:聖書でイエス・キリストが最後の晩さんで掲げたと伝えられている聖杯。シャンクリーの言葉はFAカップを指し、これを取らねば完了しない、最後の優勝杯という意味だった。

    「ユルゲン・クロップのLiverpoolにとって、次のミッションは、30年間に渡ってファンが切望し続けている、19回目のリーグ優勝。今回のFIFAクラブ・ワールド・カップは、Liverpoolがカレンダー年の2019年で勝ち取った、CL、UEFAスーパーカップに続く3つ目の優勝杯で、ジョーダン・ヘンダーソンは、この3つの優勝杯を全て掲揚したイングランド初の主将となった。そのLiverpoolが、誇らしげに披露できるリーグ優勝がないということは不条理」と、同紙は締めくくった。

    そして、ヘンダーソンは、イングランド・フットボール界の記録を作ったと同時に、Liverpoolファンの支持を更に強めた。

    「決勝戦は明らかなマン・オブ・ザ・マッチのプレイだったが、病気で急遽欠場したフィルジル・ファン・ダイクの穴を埋めた準決勝(対モンテレイ、試合結果は2-1)も含めて、ヘンドはピッチの上で主将としてのプレイを見せた」と、誰もが頬を紅潮した。

    「ヘンドは、昨季のCL優勝で、それまで心の中に抱いていた自分に対する疑問をすっかり振り払ったように見える。今では毎試合、自信をもってプレイしている」と、あるファンは指摘した。

    「昨季のある時点では、不調のためベンチに格下げされたこともあった。そんな時に、へそを曲げて移籍を考える選手も少なくない中で、ヘンドは歯を食いしばって頑張ってユルゲン・クロップの信頼を取り戻した。今回で3回目の優勝杯掲揚は、ヘンドが努力で勝ち取った栄誉だ」と、別のファンが言った。

    「ヘンドは、Liverpoolのクラブ史上に残るエムリン・ヒューズ、グレアム・スーネス、スティーブン・ジェラードと比べると、選手としてのレベルは同じではないかもしれない。でも、このペースで向上し続けたら、30年後に振り返った時には、同じレベルで語られる名主将になっても驚きではないと思う」という声もあった。

    アンディ・ロバートソンがファンの意見を裏付けた。「ヘンドはこの試合でマン・オブ・ザ・マッチのプレイを見せた」という称賛に続き、ロバートソンは、典型的なスコットランド人らしく、イングランドに対する皮肉を交えた。

    「イングランドでは、ヘンドを過小評価する人がいるが、我々選手にとってヘンドは、最も敬意を抱いている人物。イングランドの人たちも、自分たちの見解が間違っていることに気づくだろう」

    フィルジル・ファン・ダイクは、チームの一体感と、それを実現させているヘンダーソンの主将としてのリーダーシップを強調した。「多くのクラブは、少数のグループに分かれていることが通常だが、Liverpoolは違う。全員が1つにまとまっている。そして、その選手全員からリーダーとして尊敬されているのがヘンダーソン。ファビーニョの負傷欠場以来、ディフェンシブ・ミッドフィールドとして見事にファビーニョの大きな穴を埋めている。そして、準決勝ではセンターバックを立派に務めた」。

    準決勝の試合後のインタビューで、ヘンダーソンは本音を語った。「これまでライトバックに入ったことはあったが、センターバックは初めてだった。チームが勝てたことが最も重要だが、決勝ではフィルジルが病気から復帰してくれることを祈っている」。

    そして、決勝の対戦相手であるフラメンゴについて、ブラジル人選手から情報を受けているか?との質問に、ヘンダーソンは即答した。

    「アリソンとボビー(フィルミーノ)からまだ何も聞いていない。それは、まずはモンテレイ戦に勝つことに集中していたから」。

    リバプール・エコー紙が指摘する通り、「ホリー・グレイル」は誰もが常に心の底で燃やし続けている。そのためにも、選手たちが徹底して「次の試合に勝つ」ことに全力を注いで進む限り、今後もヘンダーソンが優勝杯を掲げる姿を見られるものと、ファンは確信していた。

    一足先のクリスマス・プレゼント

    12月12日のブレクシット総選挙は、保守党が365議席を取って圧勝、マージーサイドで圧倒的に支持が強い労働党は203を大敗に終わったことで、Liverpoolファンは一斉に頭を抱えた。いつもはチームの好成績の話題で盛り上がるファン同士の集いも、誰もが暗い表情でうなだれていた。そんな時に、翌13日の午前11時半に流れた、ユルゲン・クロップと、更に6時間後に続いたジェームズ・ミルナーの契約更新のニュースに、Liverpoolファンは、「昨日のショックが一気に軽減された!」と、異口同音に叫んだ。

    クロップは2022年までの契約を2024までに延長し、ミルナーは今季末までだったのが2022年までの2年間の延長だった。どちらも、ファンの間では契約更新を切望する声が折に付け飛び交っていたと同時に、圧倒的多数のファンが「無理かもしれない」と諦めていただけに、「クロップとミルナーの契約延長のニュースは、総選挙の痛みを消しはしないものの、相当に和らげてくれた。一足先のクリスマス・プレゼントを貰ったような気分だ」と、Liverpoolファンは歓喜した。

    ジョーク好きのミルナーは、「監督は、僕が契約更新にサインするまで待って、自分もサインしたということは明らか。そう考えると、僕の重要性が証明されたような気がする」と、ウィンクした。

    「さすがミルナーだ」と爆笑しながら、Liverpoolファンは感涙をこらえた。

    ミルナーは、2002-03季に地元のリーズ・ユナイテッドでプロ生活を開始してから、2004-2008年まで在籍したニューカッスルでは契約更新を拒否し、アストンビラへと移動した。ビラでは4年契約の半分を経過した時点で、2010年に多額の移籍金でマンチェスターシティに引き抜かれた。そして、マンチェスターシティでは、2015年に契約更新を拒否し、フリーエージェントとしてLiverpoolに入った。

    自他ともに認める「心のクラブ」であるリーズ・ユナイテッドを、クラブの財政難のために身を割かれる思いで去ってからというもの、行く先々でクラブの引き留めを振り払って新天地へと移ったミルナーは、Liverpoolでも契約満了と共に去るのではないかと、誰もが危惧を抱いていた。

    「リーズは昇格しそうだし、たぶんミルナーは、今季末でLiverpoolを去って、愛するリーズに戻るのでは?」という予測は、リーズ・ファンは期待を込めて、Liverpoolファンは辛い思いで、語り合っていたものだった。

    しかし、折に付けミルナー本人が契約更新を望む発言をしていたことは、これまで在籍したクラブでの最終シーズンの言動とは明らかに異なっていた。

    マンチェスターシティでは、ユーティリティ・プレイヤーとして様々なポジションで使われたことから、「本来のミッドフィールダーとしてプレイできるクラブに行きたい」と希望を掲げ、クラブの引き留めを振り払ったことは有名な話だった。それだけに、クロップが監督になってからはレフトバックで1シーズンを過ごした時には、シティ・ファンから皮肉な揶揄が飛んだほどだった。

    実際に、この夏に「補強が急務のポジションNo.1」として誰もが上げたのがレフトバックだった。Liverpoolのフルバック2人がプレミアリーグのベストということは、ライバル・ファンも羨望のまなざしで同意しているほどだった。それだけに、過密日程や負傷のためのカバーという人材は、ベンチに座る前提で入ることになる。有能な選手は、自分のキャリアを考えれば試合に出られるクラブを選ぶだろうし、ベンチを受け入れる選手を取ったところで、カバーとしての目的が果たせるかという疑問があった。それは、若手も育ってきているライトバックよりも、レフトバックの方が必要性は高かった。

    結果的に、大金を叩いて、リスクがあるレフトバックをベンチ要員として取るよりは、実績があるミルナーに期待する方向で、夏の移籍ウィンドウはクローズした。そのような事情も、ファンの間でミルナーの契約更新いかんを心配する声に拍車をかけていた。

    契約更新に際して、「チームが必要としているならば、どのポジションでも全力を尽くす」と、ミルナーは語った。そして、ニヤッと笑って付け加えた。「レフトバックでも」。

    ミルナーがレフトバックでプレイすることについて、クロップと「議論」した逸話は、本人がジョークを込めて明かしていた。そして、翌日のワトフォード戦(試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)で、ミルナーがレフトバックでスタートと判明した時、ファンは、「クロップのミルナーへのクリスマス・プレゼント」とジョークを言って笑った。

    「ミルナーは、文字通り模範的なプロ。経験豊富で、健康管理がしっかりしているから、間もなく34歳になるというのに驚異的な体力を持つ。どのポジションでも安定したプレイが出来る貴重な戦力」と、Liverpoolファンは、ミルナーを称えた。

    「このクラブで4年半プレイしてきたことを光栄だと思っている」と、ミルナーは語った。「その間、このクラブがいかに変革し、前進してきたか、と考えると感慨もひとしお。監督コーチ陣やチームメートと一緒に毎日働くことを心から楽しんでいる。Liverpoolは本当に素晴らしいクラブだし、このチームでこれからもずっと前進し続けたい」。

    惑星オリジ

    12月4日のマージーサイドダービーを控えて、試合のオフィシャルが発表になった時に、両ファンから一斉に同じ反応が上がった。レフリーのマイク・ディーンは、リバプール市とはマージ川を隔てた隣町に当たるトランメア・ローバーズの地元ウィラル所属で、トランメアのファンとして登録していた。エバトンとLiverpoolの両方にとって「地元」に当たるディーンがマージーサイドダービーのレフリーを勤めるとは、以前は考えられないことだった。

    しかし、昨季の4部プレイオフ決勝で、トランメアのスタンドで一ファンとして熱烈な声援を送り、3部昇格決定の瞬間には周囲のファンと抱き合って喜んだディーンの様子を、居合わせた誰かが収録してインターネットで公開したことから、「プレミアリーグのレフリーが、あんな風に自分のチームを熱心に応援するとは微笑ましい」と、ファンのディーンに対する好感度が一気に増大した。

    必然的に、Liverpoolファンの間では、「今回のダービーでは中立の判定が期待できるだろう」と、安堵感が漂った。並行して、「ディボック・オリジは間違いなくスタートするだろう」と、誰もが自信満々に予測した。

    昨季後半、特にCL準決勝のバルセロナ戦(試合結果は4-0)とCL決勝(対トットナム、試合結果は2-0)のヒーローとなったオリジが、長期負傷欠場およびローン先での失意を克服したきっかけとなった、昨季12月のダービー(試合結果は1-0でLiverpoolの勝利)の96分の決勝ゴールは、オリジにとってはアンフィールドでのダービー連続ゴールだった。

    ふたを開けると、ファンの予測はことごとく的中した。

    レフリーの名前がヘッドラインを飾るような誤判定は一切なく、世間の注目は本来あるべき対象(試合)に集中した。言うまでもなく、先制ゴールを含め2得点で、ダービーでの通算得点を5としたオリジに熱い視線が注がれた(試合結果は5-2でLiverpoolの勝利)。

    この試合の実況放送で、BTスポーツの解説者として出ていたベルギー代表監督のロベルト・マルティネスと、元アシスタントのティエリ・アンリは、ベルギー代表チームでアンリと1対1のトレーニングを積極的にこなすなど、オリジの熱心な練習風景を披露した。

    それら賛辞を聞きながら、Liverpoolファンはオリジに対する支持を一層強めた。

    折しも、ジェームズ・ミルナーが先月リリースしたばかりの本「フットボーラーに質問」で、オリジに関するエピソードを語った一節がインターネット上で公開され、Liverpoolファンの間で大きな話題になったところだった。

    「オリジってこんな人だろう、と思っていた想像が的中していたと証明されたような証言だった」と、ファンは、オリジへの深い愛着を込めて笑いを交わした。

    それは、「ディボック・オリジと出会わなかったらあなたの人生は違ったものになっていたと思いますか?」という質問を受けて、ミルナーが「絶対、そう思う!」と答えたところから始まった。

    「オリジは本当にユニークな人材で、自分の世界に住んでいる。まさに『惑星オリジ』だ」と、ミルナーはオリジの真相を明かした。「4か国語を流ちょうに話すインテリで、フットボールでは今の地位を確立するまでに注いだ努力は並大抵ではない。いっぽう、ピッチ外では桁外れのリラックスぶり。ストレスとは縁がない人で、その朗らかさはチームメートに明るい笑いと緊張緩和の波を振りまいている」。

    チームのミーティングは、殆どの選手が早く来ているのに、オリジは絶対に30秒より前には来ない。いつも最後でギリギリに到着するオリジの姿に、チーム全員が大笑い、ストレスは一気に吹っ飛ぶ。バスの中で忘れ物を発見したら、誰もが「あ、またディブ(オリジ)だ」と笑う。リラックスの塊のようなオリジは、チームトークで、監督の言ってることを聞いてるのか?そもそも、対戦相手のチームはどこかすら忘れているのでは?と疑うこともしばしば。でも、ビッグ・マッチでビッグ・ゴールを決めるところを見ると「あ、やっぱり監督の言葉を聞いていたんだ!」と思う。

    「昨季のダービーで、96分の決勝ゴールを決めた時に、オリジは(何を思ったか)ネットからボールを取ってセンターサークルに全力疾走した。まるで、あと1点取らねば勝てないと思っていたかのように。その時の真意を、今度本人に質問してみようと思う。ともあれ、オリジと出会わなかったら、人生はもっとつまらないものになっていただろうと思う!」と、ミルナーは締めくくった。

    かくして、Liverpoolのチーム全体に明るい笑いをもたらしているオリジは、今回のダービーの勝利について、「みんなが楽しめる試合が出来て良かった」と語った。

    「アンフィールドの声援はスペシャルで、試合もスペシャルだった。我がチームは楽しんで試合ができた。監督が信頼して試合に出してくれて、その信頼に応えることが出来たので僕は嬉しかった。勝てたし、チーム全体がLiverpoolの選手として試合に出られることを心から楽しんだ」。

    そう言って、本当に嬉しそうに笑ったオリジに、ファンの拍手は止まなかった。

    ミスター・グッドイブニング

    賭け好きのイングランドでは、何でもベット(賭け)の対象になる。その対象は、プレミアリーグの優勝、トップ4、降格などの長期的なベットから、毎試合の結果や先制ゴールの得点者など詳細まで多岐に及ぶ。ベッティング・オフィスでは、各チームの戦績や負傷状況、移籍の噂からファンの反応など、様々な要素を分析してオッズを出しているため、妥当な数字になることが多い。

    そして、常に話題を集めるベットが「次にクビになる監督オッズ」だ。プレミアリーグの第14節を終えた時点で、最もオッズが高いのがエバトン(17位)のマルコ・シルバ、2番目がマンチェスターユナイテッド(9位)のオーレ・グンナー・スールシャールで、3番目のウルブス(6位)のヌーノ・エスピーリト・サント(※ビッグ・クラブから引き抜かれるという予想のため)は別として、4番目のウエストハム(13位)のマヌエル・ペジェグリーニまでの3人が、現在イングランドのフットボール界で最も動向が注目されている。

    オッズが高くなる背景は、第一には「戦力補強投資の成果が期待を著しく下回っている」がある。実際に、リーグの順位で16位のブライトンのグレアム・ポッターは下から3番目、15位のアストンビラのディーン・スミスは下から5番目と、ペップ・グアルディオーラ(下から6番目)よりもオッズが低い。

    加えて、「控室を失った(=選手が監督にそっぽを向くようになった)」現象や、ファンの批判がスタンドまで及んだ時、そして、監督交代が定例行事化したクラブで成績不振が続いた場合には、必然的にオッズに跳ね返る。

    その顕著な例は、12月1日に発表されたワトフォード(20位)のキケ・サンチェス・フローレスだった。9月7日に、今季プレミアリーグ第一号のクビとなったハビ・ガルシアの後任として復職して、僅か3か月のことだった。この決定そのものが、小さな記事にはなっただけで、特に話題にもならなかった。

    逆に、その2日前の11月29日に発表されたアーセナル(8位)のウナイ・エメリの解任は、イングランド中に大きな波紋をもたらした。アーセナルのクラブ記録としては、1992年以来の最悪を塗り替えた7戦無勝の成績不振と、最後の試合となったホームでのEL戦(対フランクフルト戦、試合結果は2-1でアーセナルの敗戦)では3万人に満たない入場数と、「ファンが不支持を足で表明した」現象、先のクリスタルパレス戦(試合結果は2-2)で交代した際にスタンドのファンのブーイングに対して怒りを表明し、主将職を下ろされたグラニト・ジャカ の事件を始め、エメリが「控室を失った」事象など、重たい空気が漂っていた中での決定だった。

    驚いた人こそはなかったものの、最大の議論は、「控室を失った」実態だった。先のアウェイでのEL戦(対ギマランイス、試合結果は1-1)で、帰りの飛行機の中で、中堅選手たちが「主将は何人いる?」などと、聞えよがしに監督批判のジョークを言った話に加え、選手たちがエメリの英語の発音を嘲笑することがトレーニング・グラウンドでの日常となっていたという。

    これらはエメリ解任の後で、インデペンデント紙が「アーセナルのプレイヤー・パワーの実態」として、通報者の名を伏せた記事だったが、9月に18歳の若手ブカヨ・サカが、「監督の発音は聞き取りにくいので、アシスタントのフレドリック・ユングベリ(※現在は暫定監督)に通訳してもらっている」とインタビューで語った言葉からも、信ぴょう性が高いと見られていた。

    「ミスター・グッドイブニング」とは、エメリの発音をネタにしたジョークとして、ライバル・ファンの間でしばらく前から通用していたものだった(※スペイン語ではVの発音がBとなるため、エメリの「グッドイブニング」の発音を嘲笑したジョーク)。

    「ライバル・ファンが自分たちの間で交わすジョークは、それはそれ。選手が監督の権威を真っ向から否定するようなプレイヤー・パワーがまかり通るのは間違い」と、中立のメディアやファンから一斉に非難が上がった。

    さて、「次にクビになる監督オッズ」で最下位を守っているユルゲン・クロップは、「控室を失う」現象の対極にあった。11月30日のアンフィールドでのブライトン戦(試合結果は2-1でLiverpoolの勝利)で、76分に退場となったアリソンに代わって急遽ゴールを守ったアドリアンを、クロップは「私にとってのマン・オブ・ザ・マッチ」と絶賛した。「寒いベンチに座って、ウォームアップも何もなしでいきなり試合に駆り出されたというのに、アドリアンは2つのセーブを含め、立派に守った」。

    それは、アドリアンが(ウォームアップ不足のため)悲観的単純なヘッダーをファンブルをするなど、アンチのメディアからつつかれそうな場面があったため、クロップが批判封じの先手を打ったとは、誰もが気づいていた。Liverpoolの選手たちが入れ代わり立ち代わり、「監督のお蔭で自信を持って頑張れる」と、異口同音に信頼を語る証言は後を絶たなかった。

    同時に、ファンのクロップ支持は強まる一方だった。何度も失意を味わいながらリーグ優勝を30年間待ち続けているLiverpoolファンは、昨季は7ポイント差の首位を走っている時に「我々は優勝する」チャントで勇み足を踏んだ苦い経験を元に、今季は慎重に構えていた。

    「ただ、『我々は優勝する』チャントで先走るのは禁句としても、過密日程と負傷とでボロボロになりながらも気合むき出しで頑張っている選手を見ると、心の底から100%信頼して応援を続けようと決意に燃える」。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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