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    アンフィールド要塞の再建

    10月27日の試合前に、カーディフ監督のニール・ウォーノックが、Liverpoolのフロント3は世界のトップであり、アンフィールドで勝つことは不可能に近いとLiverpoolを持ち上げた。折しもカーディフは、その前週に同じく昇格チームのフラムに接戦の末に4-2と勝って、自信を付けていたはずだった。

    これに対してニュートラルなアナリストは、「カーディフは、フラムに勝てなければ心配すべき事態だが、Liverpoolに負けることは危機でも何でもない。むしろ、勝てるはずがないと宣言することで、自分の選手たちのプレッシャーを取り除き、良いプレイができる土壌を作った」と、ウォーノックの発言を支持した。

    いっぽうLiverpoolは、前週にアウェイでハダースフィールドに1-0と勝って、それまでの「降格ゾーンにいるチームとのアウェイの戦績は最近5試合で無勝」の失意の記録を、辛うじてストップしたばかりだった。ユルゲン・クロップ在任中の通算では、下から3位以内のチームには19戦わずか6勝と、「勝てるはずのチームにポイントを落とす」傾向は顕著だった。

    同時に、アンフィールドでは2017年5月以来、連続31試合で無敗、特に今季は対マンチェスターシティの0-0を含め、無失点記録を貫いていたことで、ウォーノックの白旗宣言もあながち的外れではなかった。

    「ユルゲン・クロップがアンフィールド要塞を再建しつつある」と、Liverpool陣営では、地元紙やファンが異口同音に唱えていた。「昨季は106ゴールで100ポイントと、圧倒的な差でリーグ優勝を遂げたペップ・グアルディオーラが、異例な『ポイント狙い』の戦術で臨まざるを得なかったことが、アンフィールド要塞の再築を物語っている」。

    Liverpoolの黄金時代にメディアの定番だった「アンフィールド要塞」とは、アウェイのチームが「ボールを蹴る前から負けを覚悟していた」ものだった。

    「ニール・ウォーノック程の経験豊富な監督が、3ポイントをプレゼントしに来るはずがない」と、クロップは一笑に付した。

    水曜日のCL戦(対レッドスター、試合結果は4-0でLiverpoolの勝利)にゲストとしてアンフィールドを訪れていたディルク・カイトが、クロップの警戒に同意を示した。「Liverpoolを出て古巣のフェイエノールトに戻った時に、最初のシーズンで優勝を逃した。それは、下位のチームにポイントを落としたためだった。今のLiverpoolは、CLで4-0と快勝するようなチームだが、本当の勝負はカーディフのようなチームとの試合」。

    これに対してLiverpoolファンは、「カイトの言葉はその通り。以前はこのような時にいつも、典型的なバナナ・スキンだと心配が浮かんできた。でも今は、この試合で3ポイント以外の結末は想像できない」と、顔を見合わせた。

    ふたを開けるとLiverpoolは、フロント3がカーディフの堅い守りを突き破り、4-1とウォーノックの危惧を実現した。

    近年で、Liverpoolが本格的にリーグ優勝争いに参戦した2008-09季と2013-14季の「強かったチーム」のうちの一人であるカイトに対するファンの人気は、今でも高かった。「カイトがいた頃の2009-10季は、前シーズンから1位上ることを期待していたが、前オーナーのゴタゴタでチームは崩壊してしまった。2014-15季も、複数の事情が重なって夢が散ってしまった。でも、今のチームは監督と選手の顔ぶれを総合すると、前2回よりも自信が持てる」と、ファンは頷き合った。

    「僕がLiverpoolに入った時には、リーグ優勝というのは『期待』だった。でも、今は『自信』になったという感触を受けている」と、カイトがファンの思いを表現した。「選手たちと言葉を交わしても、ファンの声を聞いても、その印象は強まる一方。今のLiverpoolは、誰もがリーグ優勝は可能だと信じている。優勝を成し遂げるには、みんなが自信を持つことがスタートだから」。

    2016年にメイン・スタンドが新装開店し、収容人数が8,000人増えた時に、「アンフィールドのパワーが8,000人分増強されることになった」と、クロップは力を込めて語った。

    「アンフィールド要塞のために、クロップは常に我々ファンに対して、その一端を担うよう要求する。だから我々も、バナナ・スキンの心配などしている余裕はない」と、ファンは笑顔を浮かべた。「近年の2度の挫折は痛かったが、それを乗り越えて、今のチームを信じて進むことが大切」。

    カーディフ戦の後で、クロップは語った。「シーズンは長い。先のことを見ている余裕はない。ただ、今はクラブ全体にとって絶好調の状態にある。ファンとの連携も抜群だ。これを持続することが必要。選手たちは信頼に値する」。

    スペシャルなシーズンを目指して

    10月20日のジョン・スミス・スタジアムで、Liverpoolはハダースフィールドに1-0と勝って、チェルシー(試合結果は1-1)、マンチェスターシティ(試合結果は0-0)と2試合続いた無勝をストップした。同時に、プレミアリーグ開幕から9試合で合計わずか3失点というクラブ記録を塗り替えた。

    「アリソンとフィルジル・ファン・ダイク効果」と題して、地元紙リバプール・エコーは、126年のクラブ史上で最高のディフェンスを誇る現チームを分析した。ファン・ダイクが入る前の、昨季前半は、プレミアリーグ24試合の失点28と、1試合平均1.17だったのに対して、ファン・ダイクが入ってから現在までの23試合では、合計13失点で1試合平均0.56という顕著な差が出ていた。

    「ファン・ダイクがいかなるクロスをもブロックする。まれにセンターバックを突破しても、ゴール前にはアリソンが控えている。£75mと£65mの移籍金が『効果的な投資』だったことは誰も疑わない」。

    ファン・ダイクの移籍金について、かつては「サウサンプトンが雪辱を込めてLiverpoolからぼったくった」と笑ったアナリストが、今では競ってファン・ダイク称賛を唱えていた。中でも、マッチ・オブ・ザ・デイのレギュラー解説者の一人であるクリス・サットンは、「ファン・ダイクは、現役選手の中ではリオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドに続く世界No.3」と主張するに至った。

    「サットンの誉め言葉は言い過ぎかもしれないが」と前置きした上で、エコー紙は、「対戦相手の正直な告白」を紹介した。スカイ・スポーツの実況にゲスト出演したワトフォードのストライカー、トロイ・ディーニーが、「何度も言うが、僕はファン・ダイクが大嫌いだ」と言ったものだった。

    「彼と対戦するのは、ひとえに悪夢だ。彼は体格も良すぎるし、強すぎるし、スピードがあり過ぎる。その上、ボール・スキルがあり過ぎて、強烈な闘志を持っている」と、ディーニーは顔をしかめた後で、ニヤッと笑って言った。「そして、彼は全身にスプレーをかけまくって試合に臨むようだ。彼が僕を抜いて走って行く時に、スプレーのいい匂いが漂う。思わず弱音が出てしまう」。

    Liverpoolファンは、爆笑しながらディーニーのユーモアセンスに拍手を送った。「プレミアリーグの対戦相手のチームはみな、ファン・ダイクにはかなわないことを知っているから、ファン・ダイクを避けてもう一人のセンターバックに集中攻撃を仕掛けているように見えるが、このディーニーの証言から、それは真相だと確認できた」。

    ファンのファン・ダイクに対する信頼は厚かった。「ファン・ダイクが来てからは、コーナーを与えても爪を噛むことなく安心して見ていられるようになった」と、誰もが頷いた。そして、ファンの間で「ファン・ダイクの真価は、プレイだけでなくリーダーシップにある」という見解でも一致していた。

    「主将と副主将が二人ともミッドフィールドから全体を見ている。フロントの中ではボビー(フィルミーノ)がリーダー格。そして守りではフィルジルがしっかり締めている」と、パートナーのジョー・ゴメスがファン・ダイクへの信頼を語った。

    この夏以来、折に付けファーストチームのトレーニングに参加するようになったアンダー21のセンターバック、ナット・フィリップスは、「ファン・ダイクのようなワールドクラスの大先輩と一緒にトレーニングする中で、得られるものは莫大」と、頬を染めた。

    若手から憧れのスターとして崇拝され、チームメートから信頼され、ファンから熱烈な支持を受け、中立のアナリストから過分なまでの誉め言葉を貰い、対戦相手の選手から恐れられているファン・ダイクは、常に冷静でしっかりと足を地に付けていた。

    「フロントも含め、チーム全員で協力し合って守るからこそ、クリーンシートができている」と、ファン・ダイクはクラブ記録達成の背景を説明した。「ハダースフィールド戦では反省点もたくさんある。向上すべきことは多いと認識している」。

    「今のチームは、全員が同じ目標に向かって前進している。スペシャルなシーズンにしたい、という意欲に燃えている。ずっと先のことを見るのではなく、1試合1試合ピッチの上でやるべき責任を果たすことが重要だということは承知の上で、今のみんなで力を合わせて歴史を作りたいと思っている」。

    ユルゲン・クロップ監督就任3周年

    今季2度目のインターナショナル・ウィークに突入した10月8日に、Liverpoolは重要なマイルストーンを通過した。まる3年前のこの日、ユルゲン・クロップが監督として正式に発表されたのだった。地元紙リバプール・エコーのクロップ3周年記念特集記事は、クロップの就任挨拶の風景で始まった。

    「ユルゲン・クロップは、代表チームから帰還してくる選手が全員揃うまで待って、メルウッドで就任の初顔合わせを行った。そのミーティングには、食堂のスタッフから警備員まで、文字通り全スタッフが出席した。選手たちにクラブのスタッフ一人一人を紹介し、クロップは言った。『全員の名前を知ってるかい?君たちが試合で頑張れるために、日々支えてくれている人たちだ』と」。

    クロップが重要視した「チーム」には、選手はもちろん、クラブのスタッフに加えて、ファンも含まれていたことは誰もが知るところだった。

    「私が来た時のLiverpoolは、大きな問題を抱えていた。誰もが自信を失くして暗い表情だった。自分たちが勝てるとは思っていなかった。それは違うのだ、と私は思った。まず最初にやるべきことは、懐疑心を信頼に変えることだった」。

    クロップの言葉は瞬時にファンに浸透した。それまでチームやクラブに対する意見が分裂していたファンは、誰もが懐疑心を捨ててクロップに対する信頼で一致した。「どこを見ても誰もが笑顔を浮かべている。ファンの分断を解消しただけで、既にクロップは大きな業績を達成した」と、ファンは頷き合った。

    「私はマジシャンではない。一気にプレイを飛躍的に上昇させることはあり得ない。私のやり方は、1歩1歩努力して固めて行くこと。それは時間がかかるが、必ず良くなるのだと忍耐力を持って欲しい」と、クロップは語った。

    その言葉が実現されたことは、誰もが確信していた。「クロップのLiverpoolは、プレミアリーグで最も面白いフットボールをするチーム。それは、一時はダメだと見られていた選手の潜在能力を引き出し、若手を育て、加えて効果的な戦力補強でクロップが達成したこと」と、ファンの意見は一致していた。

    それは、Liverpoolファンのひいき目ではなかった。このインターナショナル・ウィーク中に、チェルシー監督のマウリツィオ・サリが母国イタリアのメディアのインタビューで語った言葉でも同期を取っていた。

    9月29日のスタンフォードブリッジでのプレミアリーグ戦で、ファイナル・ホイッスルの直後に、サリがクロップと交わした会話の内容について明かしたものだった(試合結果は1-1)。

    「10分前に、タッチラインでクロップと言葉を交わした。我がチームが1-0で勝っていたのだが、クロップは笑顔で言った。『いい試合だと思いませんか?』と。私は『まったくそう思う!』と言った。だから、同点で終わった後で、クロップとはまるで旧友のように抱き合った。たとえ同点ゴールが出てなかったとしてもクロップは同じことをしただろうと確信している」。そして、サリは締めくくった。「プレミアリーグにはこのような、フットボールの魅力がある」。

    試合後の記者会見で、サリがLiverpoolとクロップを絶賛し、今季のプレミアリーグの優勝候補だと断言したのに対して、イングランドのジャーナリストが「あなたはLiverpoolが29年間リーグ優勝していないことを知っていますか?」と質問した。「知っている。何故そんな長いこと優勝してないのか、私には理由はわからない。ただ、それは過去のことで、今のLiverpoolは勝てるチームだと思う」と、サリは真顔で答えた。

    最後のリーグ優勝が29年前であるだけでなく、最後のトロフィー(2012年のリーグカップ優勝)が、既に7年前のことだった。トロフィー無しで終わった監督はロイ・ホジソン(2010年)が最初だったことからも、Liverpoolのクラブ史が栄光と同音異義語であることは明らかだった。

    それだけに、全国メディアや中立のアナリストの中では、「今季、もしLiverpoolがまたもトロフィー無しで終わったら、クロップのプレッシャーは非常に大きくなるだろう」という声は少なくなかった。

    Liverpoolファンは、9月26日にリーグカップ敗退し、まず最初のトロフィーの可能性を早々に失ったことに内心がっかりしながらも、「トロフィーの有無に関わらず、クロップの下でのチームの向上は明らか」と、クロップ支持は揺るがないものだった。

    「10-20年後に振り返って、トロフィー無しで終わった監督の中ではユルゲン・クロップが最も良いフットボールをした、と言われたくない。Liverpoolは、トロフィーは必ず取れると確信している。ただ、それはいつかは分からないが」。クロップはメディアのプレッシャーを認識していた。

    「正直、3年前にはここが自分のクラブだと瞬時に思ったわけではなかった。それまで14年間ドイツで監督をやってきて、ドイツのフットボールは隅から隅まで知っていたが、イングランドでは何もかも新たな発見だった。ただ、それは私が望んだ新たなチャレンジだった。このビッグ・クラブでチャンスを貰えたことに感謝しているし、光栄だと思っている」。

    「3年経って、私は監督として遥かに成長したし、今は心からここが自分のクラブだと思っている」。

    前進するために後退して達成した成功

    10月7日のプレミアリーグの首位攻防戦、Liverpool対マンチェスターシティは、世間の予想を大きく外し、無得点引き分けで終わった。得点力で定評がある両チームの対決は、プレミアリーグの超目玉戦となっていただけに、興奮もののエンターテインメントを期待していた第三者のファンは、「この90分、ペンキが乾くのをじっと見ていた方がワクワクしただろうに(※つまらない試合だったという意味の、イングランドの典型的な慣用表現)」と、一斉に顔をしかめた。

    BBCのハイライト番組では、この試合唯一の話題だったリヤド・マレスのPK失敗についてお座なりに取り上げた後で、次の議題に進んだ。

    「昇格チームのウルブスが、クリスタルパレスに1-0と勝って、8試合で15ポイントと好調を維持しています」という司会者の言葉を皮切りに、ウルブスの健闘ぶりで盛り上がった。

    オーナー交代をきっかけに、昨2017-18季にはポルトでCLを経験している注目のポルトガル人監督ヌノ・エスピリート・サントを任命し、2位に9ポイント差で2部優勝してプレミアリーグに復帰・昇格したウルブスは、ジョアン・モウティーニョ、ルベン・ネベスらを始め、ヨーロッパのビッグクラブから狙われているという噂が絶えないスター選手を抱える、今季の注目チームの一つだった。攻撃的で面白いフットボールが売り物のウルブスは、開幕早々の4戦目で、チャンピオンのマンチェスターシティに1-1と引き分けるなど、チームを問わずプレミアリーグのファンやアナリストから温かい拍手が送られる「好感度の高いチーム」となっていた。

    その中で、Liverpoolファンの視線は主将のコナー・コーディに注がれた。地元でLiverpoolファンとして生まれ育ったコーディは、Liverpoolのアカデミーチームで頭角を現し、イングランドの各年代のユース代表チームで主将を務めるに至った。ミッドフィールダーだったことと、濃厚なスカウス・アクセントで、ファンの間で「ミニ・ジェラード」というニックネームがささやかれたことがあった。しかし、Liverpoolでは1試合(89分のサブ)のファーストチーム経験に留まり、2014年夏に、21歳で当時2部のハダースフィールドへと去って行った。

    そのコーディが、昇格を決めた2017-18季のウルブスのプレイヤー・オブ・ザ・シーズンに輝き、ファンの絶大な支持を受ける主将としてプレミアリーグに戻ってきたのだった。

    「ウルブスの快進撃の立役者として、常に名が上がるのはモウティーニョやネベス。もちろんこの2人は素晴らしい。しかし、なかなか脚光を浴びないながら、主将のコナー・コーディの重要さは一筋縄ではない。試合を読む力は素晴らしく、タイトな場面でも常に冷静を保つ。パレス戦でもコーディの安定した活躍が目立った」と、BBCのレギュラー解説者であるアラン・シーラーが熱弁を振るった。

    折しも、イングランド代表チームが発表になったばかりだった。「コーディが代表入りしないのはおかしい」と、BBCのアナリストが一斉に紛糾した。

    9月のインターナショナル・ウィークが明けた頃に、デイリー・ミラー紙が「前進するために後退し、ボール・スキルの高いセンターバックとして評価されるに至った」というタイトルで、コーディの成功への道に焦点を当てた。

    「Liverpoolファンの家庭で生まれ、大好きなLiverpoolのアカデミーチームで育った僕にとって、Liverpoolを出るという決断は辛かった。でも、プロとして身を立てるためには試合に出られるクラブに行くことが必要だと思った」と、コーディは語った。

    ジェイミー・キャラガーを憧れのヒーローとしていたコーディは、2014年夏にLiverpoolを出て、翌2015年にウルブスに移籍した時には暫くライトバックでプレイしていた。本格的にセンターバックとして開花したのは、ヌノが監督となった2017-18季のことだった。「Liverpool時代に、キャラガーと一緒にトレーニングする機会に恵まれたお蔭で、試合を読むことを学んだ。その時の貴重な経験と、現監督から日々自信を貰っていることで、大きく成長できたと思う」。

    かくしてLiverpoolを出たコーディは、いったん下位ディビジョンに下がり、そこで成長を遂げてからプレミアリーグへと上った。

    「夏にウルブスが昇格した時、コーディの成長ぶりには感銘を受けた」と、Liverpoolファンは目を細めた。「Liverpoolのユースチームでミッドフィールダーとしてプレイしていた頃には、特にスペシャルなテクニックを持っていたとは思わなかったが、常に前向きで努力家でしっかりした考え方を持つ選手だった。ウルブスの主将として成功している姿はひとえに嬉しい」

    チームのためにポイントを稼ぐGK

    9月29日のスタンフォードブリッジで、Liverpoolはチェルシーと1-1で引き分けて、今季プレミアリーグ7試合目にして100%記録をストップした。しかし、ワールドクラスの超スーパースターで現在絶好調のエデン・アザールが前半早々に1-0とした後で、Liverpoolは得点チャンスを作りながらも実を結ばず、敗戦が見えてきた89分に、サブで出場したダニエル・スタリッジがゴール・オブ・ザ・シーズン候補の同点ゴールを決めた試合内容は、全国メディアの「優勝候補同士の対決にふさわしい白熱した試合」という絶賛を引き出した。

    選手の評点でスタリッジに10点満点の10点を付けたリバプール・エコー紙は、「85分のサブは通常は評価不能と避けるのだが、今日のスタリッジに対して満点以外を付けることはできない」と前置きした後で、マン・オブ・ザ・マッチにGKのアリソンを選出した。「1対1の場面で2セーブと、アリソンが単独でLiverpoolの望みを繋いだ」。

    BBCのチーム・オブ・ザ・ウィークを選出しているガース・クルックスが、エコー紙に同意した。「ゴードン・バンクス、ピーター・シルトン、レイ・クレメンスというフットボール史上最高の3大GKと共にプレイした経歴を持つ人間として、偉大なGKとは何か知っているつもり。ゴールの前に立ったら氷のように冷静であること。そしてアリソンにはそれが伺える」。

    これに対して大きく頷いたLiverpoolファンは、「ワールドクラスのGKは1シーズンに10-15ポイントを稼ぐ」と、さっそくトップ6の各GKが「稼いだポイント」の集計を開始した。「ひいき目はあるが」と笑いながら、アリソンの通算ポイントをブライトン戦(試合結果は1-0でLiverpoolの勝利)の2とチェルシー戦の1で合計3とした。「ダビド・デヘアがワトフォード戦(試合結果は2-1でマンチェスターユナイテッドの勝利)で2ポイント稼いだので2位、それ以外の4人はまだ0ポイント」。

    期せずして、ユナイテッド・ファンの間でもLiverpoolファンのアリソンびいきを裏付ける議論が交わされていた。「現在のGKの中では、デヘアが世界一と言われているし、ショット・ストッパーとしては議論の余地はないと思う。ただ最近はGKにも11人目の選手としての役割が求められるようになって、デリバリーの正確さで秀でているアリソンやシティのエデルソンが次第に上がってきている」。

    アリソンのデリバリーについては、シーズン開幕早々にアンディ・ロバートソンが語った。「アリソンのゴールキックから攻撃が開始するというのが一つのパターンとなった。ディフェンダーとしては、常に安定した守りをするアリソンが後ろにいるのでありがたい。プリシーズンの途中から入ってきたアリソンは、最初から英語で話してきたし、すぐにチームに溶け込んだ」。

    これは、チェルシー戦の直後に報道された、アリソン本人のインタビューとも同期を取っていた。「W杯の大会前から既に、Liverpoolがローマと交渉していたので、ブラジル代表チームで一緒だったフィリペ・コウチーニョにLiverpoolのことをいろいろ質問した」と、アリソンは明かした。「コウチーニョは、Liverpoolのことをあらゆる面で評価していた。監督は素晴らしい人で、選手はみな気さくでいい人ばかり。それでいてビッグ・クラブの誇りと意欲を持っている選手ばかりだ。クラブは構造がしっかりしていて安定しているし、地元は住みやすく家族もすぐに馴染んだ、と」。

    「それは、僕自身がLiverpoolと対戦した機会などから抱いていた印象と全く一致するものだったし、Liverpoolに入る決意をしたきっかけの一つとなった」。

    他の要素としてファンの熱心な応援を上げた。「CL準決勝でアンフィールドでプレイした時に、スタンドの熱い声援に感銘を受けた。ローマの方が優勢だった時にもファンの声は絶えなかった。ファンがチームを後押しして勝たせている、という印象を受けた」。

    アリソンがLiverpoolで初の失点を記録したレスター戦(試合結果は2-1でLiverpoolの勝利)の、相手ケレチ・イヘアナチョをドリブルで抜こうとしてボールを奪われたミスの後で、Liverpoolファンは異口同音に唱えた。「アリソンは優れたフットボール頭脳を持っている選手。このミスから学ぶだろうことは間違いないし、ミスの直後にも冷静さを失わず、落ち着いてセーブする強い精神力を持っている。ミスを絶対にしない選手などいない。毎試合で出しているデリバリーと安定したセーブで、そのごくまれなミスの分は十分に補える」。

    ファンの信頼を、アリソンは裏付けた。「レスター戦のミスから僕は2つ学んだ。状況を適切に判断し、危なそうなときは絶対にドリブルせず、スタンドに蹴り上げること、そして、プレミアリーグのレフリーは他リーグとは違うということ。あの程度のコンタクトではファウルは取らないのだから、今後は必ずレフリーの笛を待たずに起き上がること」。

    アリソンがその言葉を実行していることは明らかだった。ライバル・ファンですらレスター戦のミスを話題にしなくなった頃に、プレミアリーグでの最大のテストとなったチェルシー戦で、£65mの移籍金は正当だったと言われるに至った。

    「Liverpoolに来て、何もかも順調。家族は既にここの生活に順応して幸せな生活を送っている。お蔭で僕はフットボールに専念できている」と、アリソンは笑顔を浮かべた。

    「でもプロとして成功だと言えるためには、チームが多くのトロフィーを取ること」。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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