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    キャラのマン・オブ・ザ・ウィーク

    スカイTVで生放送されることになっていた、12月19日のグッディソン・パークでのマージーサイド・ダービーを控えた週末に、そのマンデーナイト・フットボールのレギュラー解説者、ジェイミー・キャラガーが、古巣Liverpoolにエールを送ると共に、「マン・オブ・ザ・ウィークはユルゲン・クロップ」と宣言した。これは、前週のヘッドラインを飾り続けた「ガリー&フィル・ネビルのロリス・カリウス批判」事件の結末として、クロップがネビル兄弟に対して厳しいカウンターを加えた上で、12月14日のミドルスバラ戦ではカリウスを外して3-0と勝利を得た勇断に対する賞賛だった。

    「僕は2回カリウス批判をしたが、ガリーとフィル(ネビル)はそれぞれ1回ずつしかしなかった。でも、クロップがネビル兄弟の方に食って掛かったので、僕にとっては尚いい気分だった」と、キャラは笑った。「カリウスを外したことは、不必要なまでにメディアの注目を受けてしまっていた23歳のGKを『プレッシャーから守る』効果があったし、Liverpoolのチームはピッチの上に集中できて、快勝で終わった。月曜日のダービーに向けて、最適のウォームアップになった」。

    キャラとガリー・ネビルの絶妙なコンビが人気を呼んでいるマンデーナイト・フットボールでは、慣習として、勝ったチームの監督を試合後のゲストに迎えることになっている。キャラは、「是非ともクロップに来てもらって、ガリー(ネビル)に面と向かって、再攻撃をかけて欲しい」と締めくくった。

    かくしてクロップは、キャラからマン・オブ・ザ・ウィークに抜擢されたが、クロップに対する賞賛は、Liverpool陣営のあらゆる方面から続いていた。

    地元紙リバプール・エコーは、昨年10月のエバトン戦が、Liverpoolのチーム全体が重たい雰囲気の中にあり、前監督ブレンダン・ロジャーズにとって最後の試合となった事実を振り返った。「前回のグッディソン・パークでのダービーは、Liverpoolファンの間で、不安と懸念が渦巻く中で迎えた。僅か14か月後の今回は、ファンは自信と期待を全身で表現している。その時のLiverpoolの先発メンバーの中で、いなくなってしまった選手は、唯一、マーティン・シュクルテルだけ。殆ど同じ顔触れというチームが、ここまで大きな差を作った要因は、ユルゲン・クロップ」。

    同紙は、前監督のサインで、スタートに躓いた選手たちが、クロップの下で本来の実力を発揮するようになった例として、ロベルト・フィルミーノ、アダム・ララーナ、デヤン・ロブレンを上げ、この夏に入って来て、即戦力として活躍しているサディオ・マネを、クロップ効果のたまものと称した。

    これに対して、常に「試合に勝てば選手の功績。負ければ監督の責任」という主張を貫いているクロップは、特にマネの快進撃について質問されて、頑固として否定した。「マネは元々能力がある上に、更に向上を目指して毎日熱心にトレーニングに励んでいる。現在の好調は、私のお蔭でなどない。ひとえに、本人の努力の成果」。

    そして、グッディソン・パークでのダービーは、マネが94分の決勝ゴールで、Liverpoolのヒーローに名を連ねた(試合結果は1-0でLiverpoolの勝利)。決してクラシックとは言えない低調な試合で、またも無得点引き分けかと思ったところで出た決勝ゴールだった。

    「好調の原因は、ひとえに監督のお蔭」と、マネはクロップの言葉を真っ向から否定した。「監督は、選手の良いところを引き出して、選手に自信を与えてくれる。こんな素晴らしい監督は、他にはないと思う。監督は、心から選手のことを信頼してくれている。信頼されていると感じるから、我々は、また更に頑張れる。監督がいるからこそ、選手全員が和気あいあいとして、自信に満ちている」。

    Liverpoolにとっては2011年以来、ほぼ5年ぶりのグッディソン・パークでの勝利だったが、昨季4月のアンフィールドでの4-0の勝利に続き、クロップは、「就任初ダービーから2連勝を達成した初の監督」という、クラブ記録に名を刻むことになった。

    「マージーサイドのクリスマスは赤で決まった」と歓喜に沸くファンは、クラブの内部から聞こえる「現在の好調は誰のお蔭か」という水掛け論に、誰もが同じ答えを抱いていた。


    ゴールキーパーのジレンマ?

    先週12月4日のボーンマス戦(試合結果は4-3でボーンマスの勝利)で、インジャリータイムの決勝ゴールを献上したLiverpoolのゴールキーパー、ロリス・カリウスを巡る議論は、イングランドのメディアを飾り続けた。ジェイミー・キャラガーが「カリウスがゴールを守った10試合で、LiverpoolのNo.1として十分な実力を、まだ見せてもらっていない」と厳しく批判したコメントも含め、大多数のアナリストから否定的な評価を受けていた。

    これに対してユルゲン・クロップは、「アナリストはスタジオでビデオを見ながら、各プレイを分析するのが仕事で、批判もその一環」と軽く流し、「ジェイミー・キャラガーも現役時代には批判されたことがあるだろう」と、かわした。

    しかし、翌日になって、カリウスのミスを誘って決勝ゴールをアシストしたボーンマスのスティーブ・クックが、インタビューで、「カリウスがLiverpoolの弱点だから、狙い撃ちするという作戦で臨んだ」と公言したことが、クロップの激怒を買った。

    「私がこれまでプロ生活で聞いた発言の中で最悪と言えるもの。ボーンマスは立派に戦って試合に勝った。でも、あの選手は、その上更に、相手チームの選手をけなす必要があると思ったのだろうか。あの言葉だけで、私は次にボーンマスと対戦する日を待ち焦がれる気になった」。

    1週間を通して議論のネタになり続けたカリウス本人が、12月11日のウエストハム戦の直前に、ミラー紙のインタビューで、自ら火に油を注ぐことになった。

    それは、「僕は、自分のミスについて反省しているし、チームメートに謝った。みんなが、ミスはチーム全員の責任だと言ってくれた。しかし、アナリストが、執拗に僕を批判するのは何故なのか理解できない。キャラガーはLiverpoolのレジェンドだし、ファンとしての苛立ちもあっただろうから、彼の批判は受け止める。しかし、ガリー・ネビルには言われる筋合いはない。短期間、監督を勤めて、そしてアナリストとして復帰して、すぐに、専門家面しているように見える」。

    これに対して、ガリー・ネビルが「失礼しました。監督として失敗した奴は黙っているべきでしたね」と冷たい反応をしたところ、キャラガーが「我がチームのキーパーを、苛めないでくださいよ」となだめに入り、丸く収まった。

    かくして、ピッチ内外のミスで、イングランド中の注目を受けていたカリウスは、ウエストハム戦で、前半に2失点を与える失策を起こした(試合結果は2-2)。ハーフタイムのキャラガーの一言は、Liverpoolファンの大多数の意見を代弁していた。「余計なことを言わず、やるべきことをしっかりやりなさい」。

    スカイの実況陣が、「ディミトリ・ペイェのフリーキックは、本来のペイェには程遠い出来だったが、カリウスのポジショニングが悪すぎたため入ったゴール」と分析した直後に、テレビカメラが、アンフィールドのスタンドに座っていたレイ・クレメンス(Liverpool在籍は1967–1981)とブルース・グロベラ(Liverpool在籍は1981–1994)を映した。すかさずアナウンサーが、「Liverpoolの史上に残る偉大なキーパー2人の意見を聞きたいものです」と、痛烈な一言を加えた。

    試合後の記者会見でも、話題の中心はカリウスだった。「ペイェのフリーキックは止めることが出来たと思いませんか?」という質問に対して、「その質問をしたのは、あなたで7人目です」と、クロップはいつもと同じユーモア交じりの口調で、火消しに努めた。「私は1回しか見ていないので、正直、判断できない。何度かリプレイを見て言っているあなた方の方が、実は間違っているかもしれないし」。

    「それより、ペイェのフリーキックは、さすがだと思った。試合前のウォームアップで、彼がフリーキックの練習をしていたのをじっと見ていた。その時は、全部外したので、私は心の中で『試合でも外してくれればいいのに!』と祈っていたのだが、残念」。

    そして、記者団の笑いが収まった後で、勝てなかった理由を語った。「私の作戦が外れたため。ウエストハムは3バックで来ると思ったのに、フラット4で来た。そのため、我がチームは戸惑った。後半、立ち直って頑張った。最後まで勝ちを目指して戦ったし、スタンドのファンは、その選手たちの気合いを評価して、精一杯応援してくれた。同点ゴールが出せたのは、その成果。勝ち越しゴールが出せなかったのは反省点」。

    クロップの言葉に、ファンは深く頷いた。「クロップが選手全員について的確に評価を下し、対策を練っていることは間違いない。その上で、公の場では絶対に選手の批判はしないという態度を貫いている。たとえ、ダメだと決断した選手だとしても、公の場で批判するのはマイナスでしかないのだから、クロップのやり方は全面的に正しい」。

    カリウスについては、今の状況に満足している人は誰もいなかったが、同時に、ネガティブは決断を下している声も殆どなかった。「23歳のキーパーというと、まだ駆け出しの年齢。特にプレミアリーグ初シーズンなのだから、時間を与えるべき」。

    感情的な1週間の結末

    11月29日の朝(英国時間)に伝えられたコロンビアでの飛行機事故は、世界中、特にワールド・フットボール界に大きな衝撃を与えた。それから1週間近くたった12月5日の夜に、CONMEBOLが、シャペコエンセのクラブに対して、コパ・スダメリカ優勝を正式に授与すると発表した。亡くなった19人のシャペコエンセの選手、そしてチームを支えるために同乗していたクラブのスタッフや、ジャーナリストたちが、天国で優勝を祝えることを、ワールド・フットボール界は心から祈った。

    このニュースが伝えられた日に、2009年にはブラジル4部リーグの無名チームだったシャペコエンセが、おとぎ話のような出世街道を進んだ末に、2016年にはとうとうコパ・スダメリカ決勝進出という偉業を達成、その晴れ舞台に向かう機内での、シャペコエンセの選手たちの、笑顔と気合いに満ちた動画が流れた。

    「涙があふれてきて、見てられない」と、世界中のフットボール・ファンが目を拭った。世界各国のクラブや関係者から、追悼と、様々な支援を申し出るメッセージが飛ぶ中で、コパ・スダメリカ決勝の対戦相手だったコロンビアのアトレティコ・ナシオナルから、「こんな悲劇で相手チームを失った我々は、戦うことが出来なくなった。シャペコエンセが優勝を得るべき」という宣言が出た。

    その衝撃が渦巻いていた11月29日の夜、アンフィールドで、リーグ・カップ準々決勝(対リーズ)にLiverpoolの主将として先発することになっていたルーカスが、「黒のアームバンドを着けさせてください」と、ユルゲン・クロップに許可を依頼した。それに対してクロップは、「Liverpoolのチーム全員が、君と一緒に黒のアームバンドを着ける」と即答した。

    2-0と勝って準決勝進出を決めた試合後のインタビューで、ルーカスは神妙な表情で語った。「悲惨な事故。僕がユース・チーム時代に、一緒にプレイしたことがある選手が数人、あの飛行機に乗っていた。だから、僕にとって、今日の試合は、とても困難だった。シャペコエンセの地元には、知り合いもたくさんいる。亡くなった方々が安らかに眠れることを心から祈っている。そして、遺族に対して、できる限りのサポートをしたい」。

    青天の霹靂だったルーカスの言葉は、Liverpoolファンや地元メディアの感情を直撃した。「ルーカスは、そんな状態だったとは、みじんも感じないようなプレイを見せた。試合に集中することで、亡くなった知人を追悼しようと決意していたのだろう」。

    そして、12月3日の週末には、全てのチームとそのファンが、試合前の1分間の黙とうで、シャペコエンセに追悼を捧げる機会が与えられた。ルーカスと同じように、元チームメートを失ったチェルシーのダビド・ルイスが、ウィリアンとならんで、天国に向かって黒のアームバンドをかざした姿は、イングランド中のファンの目頭に焼き付いた。

    かくして、選手にとっても、ファンにとっても、感情的な1週間だった12月4日に、Liverpoolは、ボーンマスに4-3と敗れ、8月のリーグ戦(対バーンリー、2-0でLiverpoolの敗戦)以来15試合続いた無敗記録に終止符を打った。それも、2-0、3-1とリードしながら、最後の15分に3失点を食らったという、手痛い敗戦となった。具体的には、負傷のため、火曜日に続いて、急きょセンターバックに入ったルーカスが、感情面に加えて体力的な疲労が出たこと、多数のアナリストから集中批判を受けたGKのミスなど、原因は明らかだった。

    「3-1になった時に、我々の方に勢いが戻って来た。しかし、そこでチーム全体がストップしてしまった。ボーンマスに対して、ドアを開けてしまった。ただ、それでもボーンマスにとってはまだまだ道は遠かったのに、凄い気合いを込めて、その困難な任務を達成した。エディ・ハウは素晴らしいし、その監督の作戦を実行したボーンマスのチーム全体と、それをスタンドで支えたファンの勝利。鮮やかな逆転劇だと思う。私にとって残念なのは、我がチームが逆転された側になったということ」と、クロップは、ボーンマスを賞賛した。

    そして、失望を隠すべく苦戦しながらも、クロップはきっぱりと言った。「今の我がチームには、選手の態度だとかやる気だとか、そのような深刻な問題は全くない。何もせずに勝てる人などいない。間違いから学んで、努力を重ねて、初めて勝てるようになる。今日のような試合は、あるもの。悪いところが分かっているのだから、直すことは可能。必ず、立ち直って、また勝ち始める」。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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