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    スティーブン・ジェラードの引退発表

    11月24日、スティーブン・ジェラードが現役引退の決断を発表した。2015年夏にLiverpoolを出て、18か月契約でMLSに行ったジェラードは、1年前に既に、「今の契約が満了したら、現役生活を終えることになるだろう」と、漏らしていた計画を、言葉通り、実行したわけだった。

    しかし、LAギャラクシーとの契約は延長なしと決定した先月から、イングランドのメディアは「ジェラードの次のステップはどこ?」という憶測を、しきりに飛ばし始めた。その中で、最も大きくささやかれたのは、「プレイヤー・コーチとしてLiverpoolに戻って来て、今季後半に5試合に出場する」というものだった。5試合というのは、プレミアリーグ優勝を勝ち取ったチームの選手として、優勝メダルを受け取る資格を得るための試合数だった。

    つまり、今季のLiverpoolが、優勝争いの一角を占めている、という評価が出始めたことから、「17年間Liverpoolに忠誠を尽くしたレジェンドのジェラードが、プレミアリーグの優勝メダルなしでキャリアを終えるのは不条理」というセンチメンタルな理由で、「5試合」説が飛び交ったのだった。

    これに対して、圧倒的多数のLiverpoolファンは、一斉に冷笑した。「プレミアリーグ優勝メダルを勝ち取れなかったことを、『唯一の後悔』と何度も宣言しているジェラードが、『同情でメダルを貰う』行為を、まともに考える筈がない。そんな憶測を飛ばすことは、ジェラードに対する侮辱だ」。

    そんな中で出たジェラードの引退声明は、Liverpoolファンの信頼を裏付けていた。「僕の今後に関する、このところのメディアの憶測に終止符を打つためにも、今、引退の意思をはっきりと表明したかった」。

    LAギャラクシーでの18か月間で、「負傷などのため、思うようなプレイができないことが度重なったことで、年齢的にも選手生活にピリオドを打つべき時が来た、と決意するに至った」。

    ジェラードの引退発表を受けて、新旧チームメート、監督コーチ陣、そして、対戦相手だった他チームのスター選手など、あらゆる筋からジェラードの輝かしい業績を称える声が飛び交う中、BBCが「ジェラードの元チームメート」と題するクイズを掲載した。それは、Liverpoolファンでなければ顔も覚えていないような、今は下位ディビジョンのチームのベンチにいるような選手17人の写真を並べて、名前を当てるクイズだった。

    それは、Liverpoolでの17年間のうち大半を、そのような選手を引っ張って、ほぼ単独でチームに栄誉をもたらし続けた、ジェラードのキャリアを象徴していた。

    代表的なトロフィーのひとつが、2006年の「スティーブン・ジェラード・FAカップ決勝」だった(試合結果は延長の末3-3、PK戦でLiverpoolが優勝)。その時に、涙を飲んだウエストハム・ファンが、ブーツを脱ぐことになったジェラードに対する、感情の籠った言葉を捧げた。

    「ウェンブリーからの帰り道、母がおもむろに、『ジェラードのお蔭で』と叫んで、泣き出してしまった。でも、僕も泣きたかった。FAカップの優勝杯に、ウエストハムのチームカラーのリボンが飾られる日を、37年間待ち焦がれたファンにとって、あと2分で、その一生の夢がかなうところだったのに」。

    「スティーブン・ジェラードは、僕の母を泣かせた最強の敵。キャプテン・ファンタスティックの名にふさわしいレジェンド。あの時のLiverpoolは、FAカップ優勝を取る権利などなかった。ただ一人、ジェラードだけは例外だった」

    「ジェラードは引退してしまうが、僕にとっては史上最高のキャプテンとして、永遠に記憶に残る名選手」。

    勝てない時もある

    11月19日、Liverpoolがサウサンプトンに0-0に抑えられた試合の後で、サウサンプトンTVのインタビューで、デンマーク代表のピエール=エミール・ヘイビエルグが、「僕はこれまで、バイエルンミュンヘン、ドルトムント、マンチェスターシティなど強豪と対戦したが、今日のLiverpoolほど苦戦させられたことはなかった。今日の1ポイントは、大金星だと思う」と、Liverpoolを褒めちぎった。「Liverpoolの選手はみんな、スピードありテクニックありで、それが一斉に襲ってくるのだから、凄い脅威だった」。

    これは、監督のクロード・ピュエルの言葉とも同期を取っていた。最初から無得点引き分け狙いで試合に臨んだのでは?という、記者団からの意地悪な質問に、「そんなことはない。我々は勝ちを目指してかかった。でも、Liverpoolの攻撃が凄すぎて、我々は守る以外に何もできなかった。それほどのチームを無得点に抑えたのだから、我がチームのディフェンスは良くやったと誇りに思う」。

    これに対して、Liverpoolファンは、「相手チームから絶賛されるのは、最近の試合後の定番となった」と苦笑しながら、「内容的には明らかに優勢だった。残念なのは、絶好の得点チャンスを活かせなかったこと。インターナショナル・ウィークの疲れと時差ボケが、ゴール前の精度を落としたように見えた」と、ぼやいた。

    今回のインターナショナル・ウィークでも、好調のアダム・ララーナが、イングランド代表チームで負傷を負う憂き目に合った。しかも、精密検査の結果3-4試合の欠場と判明し、Liverpoolファンにとっては「代表チームにしてやられた」と泣き言がでる事態となった。

    しかし、主力を1人欠いただけで戦力が激減するようなワンマン・チームから脱却し、多少の不運な状況でも、相手チームから褒めちぎられるような試合が出来るようになった現在のチームに関して、ファンの間では、明るい要素を指摘する声が圧倒的に強かった。

    それは、勝敗に関わらず、Liverpoolのディフェンスについて常に厳しい分析を唱え続けていたジェイミー・キャラガーが、サウサンプトン戦の守りに及第点を与えたことからも明らかだった。

    「ゴール前でバスを停める相手に対して、攻めあぐねて得点できない時に、守りのミスで失点を食らって負けるという、アウェイのバーンリー戦(8月20日、試合結果は2-0でバーンリーの勝利)の事態を避けることは必須。しかも今日は、本来のロベルト・フィルミーノならば決めていたはずだった1本と、ナサニエル・クラインのヘッダーなど、得点チャンスを逃した。典型的な『勝てない時もある』試合だった。そんな時に、相手の希少なチャンスやセットピースでパニックに陥ることなく、クリーンシートを守ったのは、ディフェンスが安定してきた兆候の表れ」。

    キャラの言葉と同期を取るように、地元紙リバプール・エコーが、「ほぼ完璧なセンターバック」という見出しで、この日のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたジョエル・マティプに焦点を当てた。

    「2月にマティプがフリーでLiverpool入りを決めた時に、クロップは宣言した。『ドイツに行って、マティプに対していくら払うか?と、質問してみればわかる』と。その言葉通り、マティプは既に、Liverpoolのクラブ史を振り返りたくなる程の掘り出し物ぶりを発揮している。プレミアリーグのライバルチームでは、どれだけ大金を払ってディフェンスを強化していることか。アーセナルがシュコドラン・ムスタフィ(£35m)を、マンチェスターユナイテッドがエリック・ベイリー(£30m)を、マンチェスターシティがニコラス・オタメンディ(£34m)、ジョン・ストーンズ(£47.5m)、エリアカン・マンガラ(£32m)に、いくら投資していることか。チェルシーはダビド・ルイスに£30mを費やしている。それらの高額な選手の中で、マティプと交換したくなる選手はいるだろうか?」

    これに対して、力強く「NO」と叫んだLiverpoolファンの間では、すでにサミ・フピア(在籍は1999–2009)とバーゲンぶりを比較する議論や、黄金時代のアラン・ハンセン(在籍は1977–1991)のボール・プレイを彷彿させるなど、マティプに対する評価は急上昇していた。

    サウサンプトン戦の後で、「ディフェンダーとしては、クリーンシートを守ることは重要。我がチームの攻撃力は一流だが、毎試合、3-4点取れるわけではないのだから。今日の試合では、勝てなかったのは悔しいが、次は頑張るという気持ちを抱いて進む」と語ったマティプの、自信に満ちた表情に、ファンの期待は更に高まった。

    デヤン・ロブレンのユルゲン・クロップに対する感謝のメッセージ

    今季最初のインターナショナル・ウィーク中に、Liverpoolでの公式戦デビュー(8月27日対トッテナム、試合結果は1-1)を果たしたばかりのジョエル・マティプが、LFC TVのインタビューに登場した。今ではすっかりレギュラー・センターバックとして定着したデヤン・ロブレンとのパートナーシップについて、「お互いにカバーし合って、チームのためにしっかり守れるようになって来ている」と、頼もしい言葉が出た。

    「ドイツ語を話すエムレ・ジャンが同じチームにいることは、心強いですか?」という質問に対して、マティプは、さらっと言った。「でも、デヤンもパーフェクトなドイツ語を話すから」。

    そして、今回の11月12日のインターナショナル・ウィークの前に、ロブレンがクロアチア代表チームの監督に「理由は言えないが、今回の2試合には選出しないでください」と懇願した、という話が、Liverpoolファンの間で話題になった。「ひょっとして、家庭の事情ではないだろうか」。

    これは、8月6日のプリシーズン戦(対バルセロナ、試合結果は4-0でリバプールの勝ち)の後の記者会見で、ユルゲン・クロップがサン紙の記者をボイコットしたきっかけとなった、奥さんの背信で家庭が危機に見舞われているという、気の毒な事件だった。「いくら有名人でも、線を越えてはいけないプライバシーはある」と、クロップは真剣に怒った。

    これに対して、イングランド中のファンが一斉にクロップ支持の声を上げた。「ロブレンが浮気をした、というならば、いわゆる有名人のスキャンダルで、典型的なタブロイド紙ネタかもしれない。でも、有名人でも何でもない奥さんがやったことを、こんな風に記事にするとは、最低だ。ロブレンが気の毒だし、クロップのやったことは絶対的に正しい。もし、これが我々のチームの選手に起こったことならば、我がチームの監督もクロップと同じ態度に出て欲しいと、心から思う」。

    ファンの心配の中で、11月10日のタイムズ紙が、Liverpool通のジャーナリストによるロブレンの独占インタビューを掲載した。旧ユーゴスラビア崩壊の内戦中に、3歳だったロブレンがドイツに疎開し、7年間の難民生活を送った実話が、赤裸々に展開されたのだった。

    自宅付近が爆撃され、お母さんに抱かれて地下に籠った夜の記憶に始まり、母方のおじいさんが住んでいたミュンヘンに逃げて行ったこと、着の身着のまま、「生きるために」故郷を出て行ったロブレンは、自分が難民だという真相を意識したのはそれから3年後のことだった、という。「子どもだった僕は、近所の子供たちにすぐ解け込めた。でも、家に帰ると母はいつも泣いていた。子供の世界でも、ドイツ人の子供同士が一緒にいる姿を見て、自分とはどこか違う、と気づくようになった」。

    結局、7年後に、ビザの手続きミスのためロブレン一家は強制送還されることになったが、「ドイツには感謝している。難民を受け入れてくれて、生命の危機におびえなくて良い7年間を過ごさせてくれたのだから」と、ロブレンは振り返った。その間、かつての自宅の近辺は何度か爆撃され、多くの知人が命を落としたという。

    「今も、難民のニュースを聞く度に、彼らに生きるチャンスを与えて欲しい、と心から思う」。

    そして、その翌日には、地元紙リバプール・エコーが、「ユルゲン・クロップがLiverpoolでのキャリアを救ってくれた」という見出しで、ロブレンのインタビューを掲載した。2014年夏に、£20mの大金でLiverpool入りしたロブレンが、スタートに躓いて苦戦する中で、すっかり自信を失っていた時に、クロップが来た。ロブレンは、クロップ下で本来の実力を取り戻した多くの選手の一人とは、誰もが一致するところだった。

    「人生では、時には困難に直面することがある。ミスを犯すこともある。フットボーラーは、何百万人の人が見ている前でミスをすることになる。そして、周囲の信頼を失ってしまうことがある」。

    「でも、クロップが来て、僕は自分を変えることが出来た。クロップは、我々をとにかく信頼してくれた。監督に信頼されているということが、自信に繋がった。お蔭で、自分の本来の力を出せるようになったと思う」。

    「クロップは、チームのために、文字通り24時間働いている。我々選手に起こっていることを全て把握してくれて、試合に集中できるように、我々を全力で助けてくれる。監督が、我々に対してこんなに尽くしてくれているのだから、我々も、100%を出すのが当然だと、心から思う」。

    監督の歌はもう歌わない

    11月6日、Liverpoolはアンフィールドでワトフォードに6-1と圧勝し、11試合で26ポイントと、2位チェルシーに1ポイント差で首位に立った。Liverpoolにとっては、シーズン途中の暫定的な順位も含めて、プレミアリーグの頂点に到達したのは2014年5月以来のことだった。

    試合後の記者会見で、さっそく記者団から「優勝狙い」の質問を浴びせられて、「11試合を終えた時点で、1ポイント差で1位にいることを、有頂天になるなんてあり得ない。シーズンは長い。この先、何が起こるかわからない。プレッシャーなど感じている暇はない。我々は、冷静さを保って、より良いプレイを目指すだけ」と、ユルゲン・クロップはあっさりかわした。

    「前日にチェルシーが強さを見せつけた(対エバトン、試合結果は5-0でチェルシーの勝利)。マンチェスターシティがバルセロナに圧勝した試合は強烈な印象に残っている(試合結果は3-1でシティの勝利)。アーセナルとトットナムは今日は引き分けたものの(試合結果は1-1)、依然として好調さを保っている。そして、マンチェスターユナイテッドは常に驚異。11月のリーグ順位は何の意味もない」。

    しかし、イングランドでは依然としてクロップ人気は高く、ドルトムント時代の実績と現在のLiverpoolの破壊的な攻撃力に加えて、今季はヨーロッパのカップ戦がない分リーグに注力できる「利点」を上げて、騒ぐ声は絶えなかった。

    いっぽう、フットボールは結果ビジネスで、1試合に勝てないと直ちに危機説を作り上げるメディアの過剰反応は、誰もが知るところだった。

    その例の一つが、土曜日にホームでミドルスバラに1-1と引き分け、今週末で首位を明け渡したマンチェスターシティに関するネガティブな記事だった。

    「ペップ・グアルディオーラは、シティに来てすぐに、選手に対して権威を奮い始めた。まずは、プリシーズン後に初出勤してきた選手に対して、夏休み中に体重を一定数以上増やした場合には、減量するまでチームから隔離させて、別トレーニングを命じた。次は、ミーティング中に携帯を見ていた選手がいたことで、トレーニング・グラウンドのWifiをオフにした。建物内は弱い3Gが時々使えるだけで、4Gの電波が届かないため、Wifiなしでは実質的な携帯の使用禁止と、選手は不満を蓄積させている」。

    要は、勝てない時にはプリシーズンの話まで掘り下げて、監督批判の記事が満載するのが、プレミアリーグを取り巻くメディアの実態だった。

    そんな中で、毎試合スタンドに駆け付けるファンは、監督支持を表明し続けていた。シティ・ファンの場合は、プレミアリーグ中で評判を呼んでいる歌(※デイブ・クラーク・ファイブの「グラッド・オール・オーバー」のメロディで「We've Got Guardiola/我々にはグアルディオーラがいる」という感じ)で、連続無勝を6と伸ばした時にも、グアルディオーラ支持を歌い続けた。

    これに対して、同じく不調に苦しんでいるユナイテッド・ファンが、感情を込めてつぶやいた。「シティ・ファンのグアルディオーラの歌を聞くと、彼らが監督に対していかに深い情熱を注いでいるか、手に取るようにわかる。我々も見習うべきだ。そうすればメディアも、ジョゼ・モウリーニョに対して執拗な攻撃を仕掛けても無駄だと分かるだろう」。

    メディアのネガティブなプロパガンダに関しては、Liverpoolファンの間でも認識していた。「シティ・ファンのグアルディオーラの歌はすばらしい。我々も、あんな風に、クロップに対して感謝と激励の気持ちを伝えることが出来たらいいのに、と残念に思う」。

    最近のグアルディオーラ同様に、クロップにも「メディアが蒸し返して騒ぎ立てるネタ」はあった。その一つが、9月10日のアンフィールドでのレスター戦のことだった(試合結果は4-1でLiverpoolの勝利)。試合後の記者会見で、「スタンドのファンが、試合中に私の歌を歌うのを聞くと、落ち着かない気持ちになる」と言ったものだった。

    「勿論、ファンが私の歌を歌ってくれるのは嬉しい。ありがとう!」と強調しつつ、クロップはファンに懇願した。「アーセナル戦の後で、試合中にゴールを祝った過ちについて、私は反省した(※開幕戦、試合結果は4-3でLiverpoolの勝利)。それと同じで、まだ勝敗が決まってない時に、私の歌を歌うのはやめて欲しい」。

    これに対して、Liverpoolファンは、「スタンドが監督の歌を歌う、その意義の解釈がすれ違っているような気がする」と困惑しつつも、クロップの意思を尊重した。「我々はもうクロップの歌は歌わない~と歌ったら、クロップはスカウサー・ユーモアを理解してくれるだろう」と、ジョークを言って笑った。

    「クロップの良いところは、常に正直で、ファンに対しても腹を割って語ること。だから我々は、クロップに対する信頼を抱き続ける。シーズン末までの残り27試合を全勝することなどあり得ない。必ず、ポイントを落とすことがある。その時に、どんなにメディアが騒いでも、ファンが監督支持を訴え続ければ、クロップは必ず信頼に応えてくれるだろう」。

    リトル・マジシャンが肩を落とす時

    10月29-31日のプレミアリーグ日程を控えた週末に、マンチェスターユナイテッド陣営からユルゲン・クロップのLiverpoolに対する「危惧」が連発した。口火を切ったのはサー・アレックス・ファーガソンで、「1年前にクロップがLiverpool監督に就任することが決まった時に、クロップが眠れる巨人を目覚めさせるのではないかと嫌な予感に襲われた。その悪夢が実現しつつある」と語った。

    ファーガソンは、ドルトムント監督時代からクロップを高く評価していたこと、2013年に引退を決めた時に、後任監督として最初に目を付けた人物だった、とは有名な話だった。当時はドルトムントを出る理由が全くなかったクロップは、「光栄だったが」丁重にお断りした。そして1年半後に、目の敵であるLiverpoolに入ったクロップを、ファーガソンは潔く祝福した。「クロップとLiverpoolは非常に合っている。Liverpoolがまた強くなるのではないかと気が滅入る」。

    続いて、ファーガソンが黄金時代を築いたユナイテッドの「クラス・オブ92」の中心人物であるライアン・ギグスが語った。「Liverpoolが今季、優勝争いの勢力の一つであることは間違いない。80年代のLiverpoolを見て育った私にとっては、恐怖だ。勿論、今のプレミアリーグは90-2000年代とは違って、1チームが毎シーズン栄誉を独占する可能性は低い。しかし、Liverpoolは、1回優勝すれば満足してまた休暇に入るようなチームではない」。

    宿敵からの牽制が心地よく響く程に、良い空気に浸っていたLiverpoolは、チームは自信と意欲に満ちており、ファンは期待に胸を膨らませていた。

    そんな時に、ジェイミー・キャラガーが「深刻な懸念」を表明し、ファンの楽観ムードに爆弾を落とした。それは、週末に賑わした憶測記事の一つで、レアルマドリードがフィリペ・コウチーニョを狙っているという話に関するものだった。

    「僕がメルウッドでコウチーニョを毎日見ていた頃から、スペインの二大クラブが狙っているという噂が出る度に、目を丸くしたものだった。でも今は、その噂が出ると、本当に取られるのではないかと真剣に心配になる」。

    「クロップが監督に就任した時に、真っ先に考えたのは、体が小さいコウチーニョが、体力を要求するクロップのフットボールについて行けるだろうか?ということだった。ふたを開けるとコウチーニョは、クロップの指揮下でプレイを向上させた筆頭の一人となった。しかも今季のコウチーニョは、これまでの最大の弱点だった『調子の波』を克服し、ほぼ安定して高いレベルのプレイをするようになった。今のコウチーニョは、現在のLiverpoolの快進撃の発信源であり、攻撃的ミッドフィールダー部門ではヨーロッパのトップクラス」。

    キャラがまだ「目を丸くしていた」頃に、スティーブン・ジェラードが明かした言葉は意味深だった。それは、2014年夏に、去って行ったルイス・スアレスが、ジェラードに向かって「フィル(コウチーニョ)の面倒をしっかり見て欲しい」と言い残した、というものだった。

    Liverpoolファンの間では、「コウチーニョが肩を落とした瞬間に、何か凄いトリックが飛び出すことがわかる」と、「リトル・マジシャン」のニックネームが定着するのと並行して、コウチーニョ支持は深まる一方だった。同時に、「いつまでコウチーニョがLiverpoolにいてくれるだろうか?」という疑問は頻繁に上がっていた。南米の選手にとって、スペインの二大クラブから誘われれば、イングランドのクラブとしては勝ち目はなかった。

    「家族もマージーサイドの生活にすっかり馴染んでいるし、自分はLiverpoolのようなビッグ・クラブで、毎試合に出してもらえて、とても満足している」と、折につけLiverpoolへの忠誠心を語るコウチーニョに、ファンの気持ちは複雑だった。「調子の波があるうちは、おそらくスペインの二大クラブに行くのはリスクが大きいだろう。でも、安定して活躍できるようになったら...」。

    Liverpool陣営の「深刻な懸念」を裏付けるかのように、10月29日のクリスタルパレス戦で、コウチーニョは「Liverpoolでの最高の出来」という評価のプレイを見せ、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた(試合結果は4-2でLiverpoolの勝利)。

    その夜のマッチ・オブ・ザ・デイで、フィル・トンプソン(Liverpoolの選手としての在籍は1971–1984)が、「スペインの二大クラブにコウチーニョを取られる危険性」を持ち出した時に、Liverpoolファンの間で苦笑が広がった。

    「将来のことを心配しても始まらない。それよりも、今この時を堪能すべき。移籍ウィンドウの最中には、ファンやLiverpool出身のアナリストが、クロップに『マルコ・ロイスを誘惑』すべきだと騒ぎまくった。でも、今の調子を続ければ、コウチーニョはロイスの最盛期を上回る数字を出すだろう。そんなコウチーニョを、自分たちの選手として見ていられる幸せを、素直に喜ぼうではないか」。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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