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    全員が一体となって全員のために働く体制

    9月26日、ハル・シティのセンターバック、カーティス・デイビスが、10人に減って5-1と大敗したLiverpool戦を振り返って語った言葉が、Liverpoolファンの間で話題になった。

    「Liverpoolは、2人のセンターバックとそのカバーに入っているジョーダン・ヘンダーソンを除く全員が束になって襲ってくる、とも言うべき破壊的な攻撃を展開するチーム。相手が1人2人ならマークできるが、Liverpoolの場合は、大勢でパスを回し、インターチェンジしながら凄い勢いで向かってくるので、ディフェンダーとしては、守る余地がない。しかも、容赦ない。前のアーセナル戦でも10人になったが(試合結果は4-1でアーセナルの勝利)、『もう試合は決まったから少しペースを落とそう』という場面があれば、我々も隙をついて反撃を、という気力が保てる。しかしLiverpoolは、手を抜くどころか、徹底的に叩きのめしてやろう、という意欲むき出しで、完全にお手上げさせられた」。

    相手ディフェンダーの正直な敗北宣言に散りばめられた、Liverpoolの「全員が束になって襲う」攻撃スタイルについて、ファンは深く頷いた。「ユルゲン・クロップが最初から目指していたフットボールが、着実に形になってきている」。

    得点こそは2-1と僅差だったものの、内容的にはハル・シティ戦を彷彿させた10月22日のWBA戦の前に、地元紙リバプール・エコーが「Liverpoolの一体感は表面的なものではなく、内実の表れ」という見出しで掲げた記事が、ファンの意見を集約していた。

    「昨季のWBA戦では、インジャリータイムの同点ゴールで2-2と引き分けた試合後に、ユルゲン・クロップが選手を先導してコップ・スタンドに向かって手を繋いだお礼の挨拶が、世間から冷笑を浴びせられた。しかし、クロップにとっては、ファンが一体感を持って最後まで応援してくれたことに対して、感謝を表明したのであり、ファンはクロップの気持ちを素直に受け止めた。世間の目にどう映ったかは関係ない。重要なのは、選手はクロップの理念を理解して、全員が一体となって全員のために働く体制を形成している。今のLiverpoolは、皆が同じ方向を向いて、力を合わせて勝利を目指して戦っている」。

    試合後の記者会見で、この日のスタンドについて意見を問われたクロップは、明るい笑顔で、「今日のスタンドは、私が来てからの1年間で、ヨーロッパの試合を除くと最高の出来だった」と答えた。

    それに対してファンは、「クロップの見解は正解だと思う。81分に、またいつものセットピースから失点を食らった時も、ミスが続いた時も、ひるまずに全力で声援を送り続けた。ファンとしての『仕事ぶり』には満足している」と、スタンドとクロップが着実に息が合ってきた成果に、目を輝かせた。

    かくしてクロップが、Liverpoolで地元紙とファンを取り込んで、全員が一体となって全員のために働く体制を作り上げているのと並行して、チームの中でも連帯感が形成されていた。それは、WBA戦のマッチ・プログラムの監督の言葉のページで、クロップが「特記すべき事」として紹介したエピソードが、何より物語っていた。

    「この場で、ジョー・ゴメスについて特記したい。昨年10月に靭帯を負傷して、長いこと欠場した後で、ようやくメルウッドに復帰した時のことだった。1年余りぶりにファーストチームの更衣室に出勤したジョーに対して、選手全員が拍手で迎えた。それは、事前に示し合わせたのではなく、全員が、無意識にやったことだった。復帰した若いジョーに対して、選手全員が同じ気持ちを抱いていたということ」。

    期待外れのレッド・マンデー

    10月17日のアンフィールドでのLiverpool対マンチェスターユナイテッドは、試合前の盛り上がり方とは対照的に、見どころの少ない無得点引き分けに終わった。

    事前のメディアは、スカイTVの「マンデーナイト・フットボール(※月曜日の夜に行われるプレミアリーグ戦の呼称)」を、両チームのチーム・カラーで文字って「レッド・マンデー」と命名し、「伝統的なライバル対戦が、今季はプレミアリーグきっての監督同士の対決に加えて、リーグ順位も賭けている、二重三重にビッグ・マッチ」と、注目ポイントを並び立てた。

    勝敗の予測としては、中立のメディアは勿論、ユナイテッド陣営からも「Liverpool優位」という見解が圧倒的だった。ユナイテッドの黄金時代の象徴である「クラス・オブ1992」の一人であるポール・スコールズは、「Liverpoolはユルゲン・クロップ下でアイデンティティを作り上げたのに対して、ユナイテッドは個性を失ったまま復帰できずに苦戦している」と、悲観的とも言える意見を掲げた。

    常にユナイテッドの対戦相手を応援するシティ・ファンは、今季これまでのプレミアリーグの統計を上げて、Liverpool楽勝を予測していた。「今のプレミアリーグで、トッテナムとLiverpoolが、攻撃的で面白いフットボールをする2大勢力。我がチームにとっては、優勝争いのライバルがポイントを落とすのは歓迎だが、しかし、数字上でもプレミアリーグで最もカバー率の高いLiverpoolに対して、最低のユナイテッドが叶うはずがない。Liverpoolにポイントで追いつかれる覚悟はできたから、ユナイテッドが屈辱的な大敗を喫することに期待しよう」。

    結果的に、世間の予測と期待を裏切った試合の後で、全国メディアは「レッド・マンデーがデッド・マンデー(※つまらない、という意味)になった」と酷評し、第三者のファンは「この試合を見るよりも、ペンキが渇くのをじっと見つめていた方が遥かに興奮しただろう」と、ジョークを飛ばした。

    そして、当事者の反応は対照的だった。

    ユルゲン・クロップが「自分たちのプレイが出来なかった」と反省的だったのに対して、モウリーニョは、2003年にプレミアリーグが各試合のポゼッションを集計するようになって以来、チームの最低記録となった35%の数字を逆手に取って、「ポゼッション65%を誇りながら得点できなかったチームは、結局『ワンダー・チーム』ではなかった」と逆襲し、ユナイテッドの地元紙マンチェスター・イブニング・ニュース紙は、「モウリーニョの戦略がクロップの『攻撃的で魅力的なフットボール』に勝った」と「勝利宣言」を掲げた。

    これに対して、シティ・ファンが冷静な反撃を唱えた。「『モウリーニョの戦略』とは、自分たちよりも優れたチームに対して、相手に得点させないために手段を問わない、というもの。その結果、相手チームのレベルも引き下げて試合をつまらなくさせる。勝てなかった自分たちに激怒していたクロップと、アンチ・フットボールを貫いた自分たちを誇って喜びを隠せなかったモウリーニョを見ていると、今後のユナイテッドの衰退は不可避だと思ってしまう」。

    そのシティでユース・チーム時代の一時期(2009–2011)を過ごしたロリス・カリウスが、古巣のファンの見解を裏付けた。「勝てなかったのは悔しいし、反省点は多い。ただ、相手チームが『バスを停める』戦略を取ったということは、我がチームに対してそれだけ脅威を抱いていたからだと、自分たちに自信を感じる」。

    Liverpoolのゴールを守るようになって3試合目のカリウスは、まだプレミアリーグに順応している過程にある中でのビッグ・マッチで、世間の評価は不明瞭なままとなった。対極では、Liverpool戦でのスーパーセーブが習慣になったダビド・デヘアが、この日も2本のセーブを見せた。

    「特に、フィル(コウチーニョ)のシュートは、入ったと思ったので、我々にとっては残念だった。しかし、デヘアに対して素直に賞賛すべきだと思った。デヘアは、ここ数年の成長は目を見張るものがあり、今は世界のトップを争うキーパー。その実力を改めて実感させられた」と、カリウスはライバルを讃えた。

    そのカリウスの言葉に、Liverpoolファンは頷いた。「5年前に、20歳のデヘアがユナイテッドに来た時は、今のカリウスよりももっと不安定だった。それが、失敗から学びながら、ビッグ・クラブで経験を積み、トップクラスの監督が見初めた才能を開花させた。カリウスを見ていると、デヘアと同じ運命を歩むような気がする」。

    世間の期待を見事に外した「レッド・マンデー」の失意の中で、Liverpoolファンは、「カリウスにとってはリーグ初のクリーンシート。これを土台にして着実に進んで欲しい」と、期待に胸を膨らませた。

    イングランド代表チームのアームバンド

    10月10日の夜に、イングランド代表チームの暫定監督ガレス・サウスゲートが、主将ウェイン・ルーニーを次のスロベニア戦のスターティング・メンバーから外す決定を告げたことで、イングランド中が蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

    これは、その前のマルタ戦で、ディフェンシブ・ミッドフィールドで出場したルーニーが、圧倒的多数のアナリストから「チームの足を引っ張った」と批判されるプレイをしたことで、ルーニーの出場いかんが議論になっていた末のことだった(試合結果は2-0でイングランドの勝利)。

    一足先に、ルーニーがマンチェスターユナイテッドでベンチに格下げされた時に、「ジョゼ(モウリーニョ)の勇断」と、ユナイテッド・ファンは一斉に同意の声を上げた。「そもそもルーニーは、2012年をピークに下降の一途を辿っている。サー・アレックス・ファーガソンが引退した2013年に、ルーニーは出て行くべきだった。デビッド・モーイズの最初の大きな間違いは、ルーニーを2019年まで契約更新したこと」。

    ユナイテッド・ファンの間では、ルーニーがサー・ボビー・チャールトンが持つユナイテッドの得点記録にあと3と迫っている(247)数字について、「ルーニーは、果たしてユナイテッドの歴代トップ・スコアラーにふさわしい『レジェンド』と言えるか?」という議論すらあった。

    ユナイテッドでレギュラーの座を失ったルーニーは、その後のインタナショナル・ウィークで、イングランド代表チームでの地位にメスを入れられることになった。

    イングランド代表チーム史上トップ・スコアラーの記録に続き、ピーター・シルトン(1970-1990)が持つ最多キャップ(125)に8差となっていたルーニーの、現在の状況に対して、そのシルトン本人から、「ルーニーはユーロの後で代表引退すべきだった」と酷評すら出た。その結果、玉砕したマルタ戦では、ウェンブリーのスタンドからルーニーに対する大音量のブーイングが飛ぶ事態となった。

    これに対しては、もともと「イングランド代表チームのファン」とは一線を画している、マンチェスターやマージーサイドの各チームのファンが、「試合中にスタンドから、自分のチームの選手にブーイングするというのはやってはいけないこと」という批判が出た。「ルーニーのプレイを褒める気はないが、しかし、自分が応援しているチームのクラブ主将が、代表チームのファンにブーイングされるという状況を見れば、誰でも嫌な思いをすると思う」。

    それらファンの意見を裏付けるかのように、マルタ戦のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたジョーダン・ヘンダーソンから、ルーニー擁護のコメントが出た。「ルーニーは我がチームの主将。マンチェスターユナイテッドでも、イングランド代表チームでも素晴らしい業績を作ったリーダー。批判されるのは、ルーニーが強力な選手であり、本来はもっと良いプレイが出来ることをファンが知っているからだと思う」。

    かくして、イングランド中のメディア、ファン、新旧選手の話題がルーニーに集中している中で、スロベニア戦でベンチに格下げとなったルーニーに代わって、暫定的に、ヘンダーソンがアームバンドを引き継ぐ、という決定が伝えられた。

    「どん底に低迷している今のイングランド代表チームで、世界的に名が通っている選手と言えば、ルーニーだけ。その『名前』でアームバンドを与えられたルーニーを、これまでの代表監督は無条件でスターティング・メンバーに入れていた。サウスゲートは、名前でなく調子でチームを選出する勇断が出来る、斬新な監督」と、メディアもファンもこの決定を大歓迎した。

    前回、ルーニーが負傷のため外れた時に(2016年3月の親善試合のドイツ戦、試合結果は3-2でイングランドの勝利)、チェルシーのガリー・ケイヒルがアームバンドを授かった時には、いわゆる「イングランド代表ファン」から、「ケイヒルが主将とは、イングランドはそこまで落ちぶれた」という声が飛んだのに、今回は、みんなルーニー・バッシングに忙しくて、代理主将にまで目が届かないようだった。

    その中で、唯一、ヘンダーソンに焦点を当てたリバプール・エコー紙が、サウスゲートの言葉を引用した。

    「決め手となったのは、ヘンダーソンが所属クラブで、イングランドのフットボール史上に残る名選手から主将職を引き継ぐという、ものすごく大変な仕事にチャレンジしていること。そして、その中でヘンダーソンは、リーダーとしての資質を身につけ、名実ともに主将にふさわしい役割を果たすようになった。今のイングランド代表チームの中には、リーダーシップに優れる選手は他にもたくさんいるので、ラクな決断ではなかった。しかし、私は、ビッグ・クラブで主将を勤めている実績を重要視してヘンダーソンを選んだ」。

    ユルゲン・クロップの監督就任1周年

    今季2度目のインターナショナル・ウィークを控えた9月27日に、イングランド代表監督が収賄事件で辞任するというショッキングな事件が起こった。これは、テレグラフ紙の独自捜査で発覚したもので、東南アジアのビジネスマンを装った人物が、プレミアリーグで禁止されているサードパーティー・オーナーシップ(※第三者が選手の所有権を持つ契約形態)について相談を持ちかけ、サム・アラダイスが「法を迂回して実現するのは簡単」と豪語し、£400,000のコンサルタント料を約束をする一連の会話を、隠しカメラで撮影したものだった。

    7月22日に年収£3m+ボーナスの高給でイングランド代表監督に就任したアラダイスが、£400,000に目がくらんで、8月にこの「おとり捜査」に引っ掛かり、代表監督職を追われる結果となった。

    このテレグラフ紙の独自捜査は10か月前から続いているもので、その中で「£5,000を受け取った、有名クラブのアシスタント(※9月29日、サウサンプトンのアシスタント、エリック・ブラックがこの件で辞任)」、「元・現プレミアリーグの監督10人が、選手の移籍に際して『裏金』を受け取ったことを、エージェントが証言した」、「2人の有名監督が、アラダイスと同じ『役職』を受諾した」という事実を公開した。

    喧騒の中で、辞任後初めて沈黙を破ったアラダイスが、「一メディアが『おとり捜査』を仕掛けた」と、あたかも「自分は罠にかけられた」とも解釈できる発言に、ファンの怒りに油を注いだ。

    「テレグラフ紙は警察に証拠を提出したし、何ら問題はない。しかも、ビデオでの言動を見ると、アラダイスの収賄はこれが初めてとは思えない。おとり捜査をしたからこそ、長年の腐敗が暴露されたというもの」。

    メディアの批判も痛烈だった。「ペップ・グアルディオーラやユルゲン・クロップのような、超一流監督がプレミアリーグに来てくれて、品位とレベルを底上げしてくれている傍らで、英国人監督・コーチの堕落がこの国の名誉を汚している」。

    ちょうどその頃、クロップが9月26日のマンデーナイト・フットボールに出演して、レギュラー・アナリストであるジェイミー・キャラガーとの対話の中で、戦術やテクックに関する深遠な見解を披露して、イングランド中のファンの賞賛を更に高めたところだった。

    これまでにもロナロド・クーマン、ロベルト・マルティネスら監督をゲストに迎えた経験を持つキャラが、番組の後で、「番組史上に残る大ヒット。Liverpoolファンだけでなく、あらゆるチームのファンが何らかの形で話題にした。」と、喜びを語った。

    「ここ1年間というもの、ずっと、クロップのOKを取り付けるために努力し続けた。僕自身はクロップとメルウッドで一緒にトレーニングしたことがあるわけではないので、元監督と選手の打ち解けた関係がなく、出演依頼をするのも物凄く気を使った。でも、その甲斐があった」。

    その大反響の余韻の中で行われた10月1日のスウォンジー戦で、世間の期待を裏切るかのように、Liverpoolは情けないスタートを切り、スウォンジーに先制ゴールを与えた。

    トラベリング・コップが大音量の声援を激化し、Liverpoolは後半に、目覚めたかのように本来の攻撃力を発揮し、2-1と逆転勝利を収めた。

    試合後のインタビューで、決勝PKを決めたジェームズ・ミルナーが、「ユルゲン・クロップは、僕がこれまで共に働いた監督の中で、トップクラスだというだけでなく、比べる人がいない程にユニークな監督」と、目を輝かせた。

    「監督の理念はものすごく分かりやすく、選手全員が確実に理解できている。今日の試合では、監督は、ハーフタイムのチームトークでは感情を抑えて冷静に話をしてくれた。お蔭で我々は委縮することなく、後半に本来のプレイができた。でも、監督が激怒していたことは誰もが分かった。試合前に監督から言われたことはまさにその通りだったし、それが出来なかった我々が悪い。なんとしても勝たねば、と奮起した」。

    地元紙リバプール・エコーのインタビューで、クロップがミルナーの証言を裏付けた。「スタンドのファンのパフォーマンスは最高だった。楽しませてもらった。でも、前半のピッチの上のパフォーマンスは最低だった。私は内心、激怒していた」。

    「この1週間は、楽しいインタビューあり、非常にいい感じの出来事が続いた。でも、週末には、スウォンジーが待っている。我々の楽観ムードをぶち壊して、撃墜させようと目論んでいるのだ。絶対に気を抜いてはいけない。毎試合に勝つ緊張を維持できなければ、どんなに良い日々を過ごしても何もならないのだ、と選手に言った。で、あのプレイだったので」と、クロップは苦笑した。

    エコーの記者が、10月8日でクロップはLiverpool監督に就任してから丸1年になる旨を話題にした時に、クロップはきっぱりと言った。「1周年を祝うつもりは全くない。何故なら、私のLiverpoolでのプロジェクトは始まったばかりなのだから」。

    「本当に祝えることを成し遂げるために、これから皆で力を合わせて進む」。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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