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    最悪のベスト・マッチ、かつ、最高のワースト・マッチ

    1月23日のノリッジ対リバプールで、どんでん返しの末にリバプールが4-5と勝った試合について、BTスポーツの解説者クリス・サットンが言った「最悪のベスト・マッチであり、最高のワースト・マッチ」という表現は、イングランド中のファンやメディアの同意を引き出した。

    インジャリータイムに入った時には、リバプールが3-4を死守するかに見えたものが、92分の同点ゴールに続いて95分の決勝ゴールという、最後まで行方が分からない、合計9得点のエンタテイメント性と、その9得点は僅か12のオン・ターゲットから出たという数字からも明らかなように、ディフェンスのひどさが、同じくらい強烈な印象を残した。

    ユルゲン・クロップが、「我がチーム相手に得点するには、得点チャンスを作る必要はないというくらい、セットピースの守備は絶対的に是正が必要」と語ったように、リバプールの守りの悪さは、またしても大きな話題を引き出した。

    「アラン・ハンセン(リバプール在籍は1977–1991)に引退を撤回して欲しいとしみじみ思った。マッチ・オブ・ザ・デイで、この両チームの『犯罪的なディフェンス』を熱く語る姿が目に浮かぶ。そして、リバプールにとっては、センターバックとしてハンセンに復帰して欲しいと思っているに違いない」というジョークは、イングランド中の爆笑を買った。

    一方で、エンタテイメント面に着目したマンチェスターユナイテッド・ファンが、「この試合の後で、我がチームの『白熱した0-0』を見なければいけないとは、酷だ」と嘆いたジョークが、同様に、ニュートラルなファンの笑いを誘った(直後に、マンチェスターユナイテッドはサウサンプトンに0-1と敗戦)。

    そんな中で、リバプール・ファンの間では、95分のアダム・ララーナの決勝ゴールの直後に、ユルゲン・クロップが眼鏡を壊したという事件が、笑顔と共に大きな話題になっていた。これは、ララーナのゴールを祝いに走っていったクロップが、ベンチも含めて全選手が参加した派手なハグの中で、クリスチャン・ベンテケの手に当たって眼鏡が割れてしまったというものだった。

    「(ゴールが決まった瞬間に)真っすぐ監督の方に向かっていた自分に気づいた。ふと見ると、監督も僕の方に向かって全力疾走していた姿が見えた」と、得点ヒーローのララーナは語った。

    これは、ララーナにとっては昨季5月のクリスタルパレス戦(試合結果は1-3でリバプールの敗戦)以来、ほぼ10か月ぶりのゴールだった。「得点できていないことは、ずっと頭を離れなかった。チームの勝利に貢献できないことが辛かった。今日の試合では、やっと、それが出来た」。

    このゴールに、派手なお祝いをしたのはチームだけではなかった。この日のアウェイ・スタンドに詰めかけた2,600人のトラベリング・コップは、リバプール市を早朝の4:30に出発して、ノリッジでのランチタイム・キックオフに駆け付けたのだった。

    「92分の同点ゴールの後で、ノリッジ・ファンが『サイン・オン(※You'll Never Walk Aloneの替え歌で、失業率国内最悪のリバプール市を笑ったもの)』を歌う中で、反撃が出来て胸がすっとした」と、トラベリング・コップは顔をほころばせた。「試合後に、アウェイ・スタンドの我々のところに、クロップと一緒に挨拶に来た選手たちが、次々に我々に向かってシャツを投げてくれた様子は、選手たちのファンに対する気持ちの表れだったと思う」。

    ララーナは、「ファンと一緒にお祝いできたことは、とても感激だった」と、インタビューで語った。「監督が就任した直後に、ファンが最後までスタンドに残ってくれるような試合をすることはチームの責任だ、という話が交わされた。少しずつ、それが出来てきたと思う」。

    この試合の後で、プレミアリーグの各種統計を算出している筋から、興味深い数字が発表された。クロップが就任した10月からの通算で、75分以降に得点したゴール数では、リバプールは7とプレミアリーグのトップを独走していた。

    「最高のワースト・マッチと言われる程の、ひどいディフェンスの問題は残っている。でも、ファイナル・ホイッスルが鳴るまでは絶対に諦めず、最後まで勝ちを目指す態度は、クロップが既に達成したもの」と、ファンは大きくうなずいた。

    FAカップ・マジック

    1月8日、リバプール市の鉄道の入り口であるライム・ストリート駅に、プレミアリーグのタイムリーなパロディ広告で有名な、パディ・パワーのリバプールFC版が登場した。負傷者を運ぶ担架の写真に「You'll Never Walk Alone」と書いたもので、これは、リバプールのファーストチームの13人が負傷欠場中、うち7人がハムストリングという実情をパロディ化したものだった。

    エバトン・ファンには大うけで、リバプール・ファンは、苦笑しながらも負傷状況を思い、渋い顔をうかべた。

    折しも、その日の夕方に、イングランド南端のエクセターでFAカップ3回戦に臨むリバプールが、直前のストークシティ戦(試合結果は1-0でリバプールが勝利)から11人全員を変えたスターティング・ラインナップを持ってきたことで、イングランド中の驚愕を引き出した。

    ストークシティ戦の3人(フィリペ・コウチーニョ、デヤン・ロブレン、コロ・トウーレ)は負傷のためいたしかたない決定だったものの、残る9人が、翌週のプレミアリーグ2連戦を控えて、過労や追加の負傷の危険を避けるためという措置だった。

    スターティング・ラインナップの平均年齢22歳、3人が初出場で、メディアが「キンダーガーデン(幼稚園)・リバプール」と冷笑したチームは、控えのGKアダム・ボグダン、不調で外れているクリスティアン・ベンテケ、ほぼ1年ぶりの出場となったホセ・エンリケのシニア選手3人を除くと、合計で18出場の若いチームだった。

    試合を通して、エクセター・ファンが「この選手、誰?」とチャントし、テレビ観衆の笑いを誘った。終幕にブラッド・スミスが足をつって手当を受けた時には、すかさず「ハムストリング?」と突っ込みが入り、アウェイ・スタンドのリバプール・ファンからも苦いが飛んだ。

    リーグ2(実質4部)のエクセターシティの、泥まみれのピッチで苦戦を強いられた「キンダーガーデン・リバプール」は、2度リードされた末に、辛うじて2-2と引き分け、2週間後のアンフィールドでの再試合に持ち込んだ。

    エクセターは、12月初旬にFAカップ3回戦の組み合わせが決まってから、リーグ戦では4戦4敗と絶不調で、16位まで落ちていた。

    「ここ4試合では、選手たちはFAカップ3回戦のリバプール戦のことが常に意識から離れず、目の前の試合に集中できなかったことは明らか。それだけこの試合に賭けてきたのだから、意欲の塊のようなプレイを見せたのは驚きではない。まさにFAカップ・マジックだ」と、リバプール・ファンはエクセターの気合に、心から拍手を送った。

    試合後の記者会見で、ユルゲン・クロップは、エクセターのプレイを称賛した後で、若手中心のチーム編成に関して、強気の発言を貫いた。

    「今日のチームがまとまってトレーニングできたのは僅か40分。この選手たちは、もっと良いプレイができるのだから、勝てなかったのは残念。ただ、コンディションは決して良くなかった中で、引き分けは妥当な結果」。

    これに対して、メディアは一斉にクロップ批判を掲げた。「ユルゲン・クロップは、エクセターシティを甘く見たという、致命的な誤りを犯した。ラファエル・ベニテスも、初シーズン(2005年)には全く同じ間違いを犯し、2部のバーンリーに敗退するという恥ずかしいFAカップの洗礼を受けた。クロップは、ラッキーなことに、初戦で敗退の屈辱はかろうじて免れた。業績のある外国人監督でも、『FAカップ・マジック』は、経験するまで理解するのが難しいのだろう」。

    一方で、大多数のリバプール・ファンは、「若手に思いっきりやらせて、責任はすべて監督がとる」という、クロップの方針に対して、賛意を表明した。

    「今日の試合で、勝てなかったのは、直接の失点をまねいたシニア選手のミスが原因。逆に、リードされても決意を貫いて同点ゴールを出したのは、若手。プレッシャーよりも、試合に出られることをチャンスだと思って精一杯やった若手のプレイが光った」。

    73分の同点ゴールを決めた21歳のフルバック、ブラッド・スミスは、リバプールでの初ゴールに、目を輝かせた。「監督は、毎日のトレーニングで、僕のプレイを向上させるためのアドバイスをしてくれる。それは僕にとって非常にありがたいこと。そして、試合に出るチャンスを与えてもらって、ゴールも出せた。今日の試合では、勝てなかったのがとても悔しい。ただ、アンフィールドでの再試合では、絶対に勝つ自信が得られたと思う」。

    「これを起点に、ファーストチームの試合に少しでもベンチ入りさせてもらって、数分でも試合に出してもらえれば、頑張って良いプレイをしたい」と、今後の抱負を語ったスミスに、ファンは大きな拍手を送った。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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