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    ファンがいない試合は面白い?

    2年前、2016-17季の各クラブのTV収入の金額が公表されたのを受けて、「プレミアリーグの20中11のクラブが入場料収入ゼロでも黒字になる」実態を元に、BBCが特別番組を放映した。これは、多額のTV収入のため、スタジアムの収容人数が少ないクラブは、シーズン通算全試合の入場料収入が占める比率が4%そこそこという計算になり、財政的にはクラブにとって、チケット代を払って試合に行くファンのありがたみが減ってきている。極論を言うと、ファンが入らなくてもクラブは困らない、ということだった。

    その統計の2018-19季版が発表となり、ヨーロッパの全クラブのTV収入ランキングで、首位のLiverpoolは£152m、2位がマンチェスターシティで£151m、上位6までがプレミアリーグの「トップ6」が占めた。イタリアのチャンピオンであるユベントスと、ドイツのバイエルンは、昨季プレミアリーグから降格した3クラブ(カーディフ、フラム、ハダースフィールド、合計£301.2m)よりも少なかった。

    「チケット代を払い、自分の時間を捧げて試合に行く忠誠なファンよりも、自宅でソファに座ってTVを見るファンの方が大きな収入源という実態の中で、『試合に行くファン』は不要になった?」と、BBCは疑問を投げかけた。

    「ファンがいない試合は面白いのか?」

    折しも、昇格チームで上記の統計には含まれていないが、11クラブの方に入ることが想定されるノリッジで、ファン・グループがクラブの協力を得て、インターナショナル・ウィーク明けのホームの試合でビッグ・イベントを企画していた。17:30キックオフのマンチェスターシティ戦に際して、スタジアムの一角で「アロング・カム・ノリッジ・ライブ」の第一回目を開催するというものだった。

    「Liverpoolの事例を見て、インスピレーションが沸いた」と、ファン・グループの代表が語った。「Liverpoolファンのミュージシャンであるジェイミー・ウェブスターが発起人となって、CLのアウェイの試合で『ボス・ナイト』というファンのライブを開催するようになった。それが成功して、どんどん多くのファンが集まり、定例化した。同期を取るようにLiverpoolのチームはCLで勝ち続けた。それを見ていて、わがチームでも同じようなことをやりたいと構想を練り始めた」。

    クラブに話を持ち掛けたところ、クラブは大賛成で、スタジアムの一角を提供して貰う話がまとまった。「ファンが試合の日に、街中のパブに集合してからギリギリにスタジアムに来るより、早々にスタジアムに来てくれて、試合前まで現地でファン同士の交流を楽しめる場が出来ればみんなにとって良いこと」と、経営者が語った。

    かくして、「アロング・カム・ノリッジ・ライブ」は、14:00から16:30という時間帯で、カロウ・ロードのラウンジで、地元出身のミュージシャンのライブ演奏を含むファン・イベントとして開催されることになった。スポンサーも乗り気で、無料ビールが提供されるという。

    「何より、ファンが試合前から盛り上がっていい気持になってスタンドに入ってくれれば、応援もさらに強力になり、ピッチの上の選手たちに気合を注入してくれるだろうから」と、経営者は目を輝かせた。

    ノリッジ・ファンのインスピレーションとなったLiverpoolは、CLで勝ち続けて決勝に到達した。その試合の実況放送の解説者として出演していたアーセン・ベンゲルとジョゼ・モウリーニョは、試合前に、スタンドのLiverpoolファンが歌う'You'll Never Walk Alone'を、目を細めて聞き入っていた。

    「言葉では表せない程に美しい」と、モウリーニョがつぶやいたのを受けて、ベンゲルが頷いた。「本当にユニークだ」。

    トットナムを2-0と破ってCL優勝を達成したLiverpoolのチーム一行は、クラブのスタッフと一緒に全員でスタンドの前で肩を組み、ファンと向かい合って、ファンと一緒に'You'll Never Walk Alone'を合唱した。その姿は、「ファンと一緒に戦って勝ち取ったCL優勝」という選手たちの言葉が本心であることの表明であり、「ファンがいない試合は面白いのか?」という疑問に対する回答でもあった。

    フロント3の「頼りになる奴」

    8月31日のアウェイでのバーンリー戦で、Liverpoolは3-0と快勝し、プレミアリーグ単独首位を守った。ところがその試合で、85分に交代したサディオ・マネが、ベンチで怒りをぶちまけた様子がTVカメラに映り、メディアの憶測記事を刺激した。マネの怒りの原因は、試合中に得点チャンスを得た時に、モー・サラーが、自分より有利なポジションにいるマネやロベルト・フィルミーノにパスを出さず自分でシュートした結果、追加点ならず、という場面が複数回あったことだとは、誰の目にも明らかだった。

    「ストライカーが、パスすべき時にパスを出さずに自分でシュートする、ということは良くあること。得点になる時もあるし、ならない時もある。パスが欲しかった選手が、その瞬間にムカッとすることもある。何も特殊なことではないし、サディオは試合後に控室で明るく笑っていた。重要なことは今日の試合でわがチームが勝ったということ」と、試合後の記者会見でユルゲン・クロップは火消しに努めた。

    しかし、スキャンダル好きのイングランドのメディアは黙っていなかった。「サラーの自分本位は昨年から目立ったこと。それはLiverpoolのフロント3に亀裂を作る危険性を持っている」と、元エバトンのアンディ・グレイは危機説を唱えた。いっぽう、マネの「公の場での怒り」を非難する声も同じくらいに飛び交った。

    「開幕4戦4勝、しかもクリーンシートを達成したことで、前週までさんざんディフェンスの問題をつるし上げていたメディアがネタに困っていたところで、絶好の機会を得たとワクワクしている様子が目に見える」と、Liverpoolファンは肩をすくめた。

    直後に、控室に向かうトンネルの中で、マネとサラーの間を歩いていたフィルミーノが、カメラに向かって面白い顔をして笑いを取った動画が、地元紙リバプール・エコーのサイトで公開された。激怒の原因を作ったはずのサラーとマネが、腹を抱えて笑う声が、ファンに安堵の笑顔をもたらした。

    「昨季からの通算で13連勝となったこの試合で、フィルミーノはLiverpoolでの通算50得点を記録し、イングランドのブラジル人選手の最高得点数を伸ばし続けている」と、同紙は続けた。今季のフロント3の得点&アシスト記録は、サラーが3得点2アシスト、マネが4得点1アシスト、フィルミーノが2得点4アシストと、目覚ましいものがあった。

    中でも、コパ・アメリカ優勝で休暇日数も少なく、プリシーズンのトレーニング合流も遅れたフィルミーノが、開幕と同時にフル回転している様子は、Liverpool陣営内外で注目されていた。

    「毎試合でマン・オブ・ザ・マッチ候補の高いレベルを維持しているフィルミーノは、ユルゲン・クロップが最も信頼している選手の筆頭となっている」と、同紙は指摘した。

    「テクニカル面で優れていることは言うまでもないが、それに加えて超一流の態度を維持していることは、ひとえに凄い。その両方を備えている選手というのは珍しい、まさに例外的な選手」と、クロップ本人が同紙の見解を裏付けた。

    アンディ・ロバートソンが続きを引き取った。「ストライカーとして優れている選手は他にもいる、という意見は間違っていないと思う。ただ、ボビー(フィルミーノ)は他の面でも大きな仕事をこなしている。まず第一に、ボビーはディフェンスの第一線。相手からボールを奪って、それをミッドフィールドにつなげる。その間自分は相手ゴールに向かって走り、得点もしくはアシストを決める。ボビーがいないとどれほど大きな打撃か、とても表現できない」。

    ロバートソンの証言は、昨季のカンプノウでのCL準決勝1戦目(試合結果は3-0でバルセロナの勝利)で、ジニ・ワイナルドゥムが漏らした言葉とまさに同期を取っていた。負傷欠場することになったフィルミーノの穴埋めを命じられたワイナルドゥムが、控室で息を切らしながら、「君はいったい、どうやってこのポジションをこなしているんだい?きつ過ぎて耐えられないよ」と、フィルミーノを見上げたという。

    その記事に、Liverpoolファンは大きく頷いた。「サラーが周りを気にせずに自分でシュートすることが多いのは、自信満々のストライカーならではのこと。マネがアシストわずか1というのも、同じように必然性がある。そしてボビーは、自分でシュートするかパスを出すかという判断では常に最良の手段を選ぶ」。

    ボビー・フィルミーノの歌がすっかりスタンドの定番となったことも、ファンの熱烈な支持の表明だった。「いつもさわやかな笑顔を浮かべているボビーは、天使のように利他的なスーパースター」。

    バーンリー戦の試合後のトンネルで、おちゃめな笑顔を浮かべたフィルミーノの動画のキャプションの下に、同紙は結論した。「マネの怒りは静まって、チーム全体が笑いで包まれた。ボビー・フィルミーノが、どんなことでも頼れる選手だという実態が、また一つ証明された」。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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